Race Reportレースリポート
AlfaRomeo Challenge 2016 Final CHAMPION CUP in FSW
photo 小西秀宗
『New Period~新時代 』
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STiLENiA DRIVERS LINE UP
CHAMPION CUP
[SR]No.11 上松淳一 No.39 西澤嗣哲
No.85 高橋拓也
[SR2]No.13 高梨宏幸 No.422 内海直亮
No.101 大谷飛雄
[MR300]No.10 木村隆哉
[MR200]No.77 瀬上透
[AR300]No.45 伊藤由明 No.100 前田一郎
[AR250]No.321 原田好成
[AR150-2]No.74 猪股義周 No.199 武尾洋太選手
[AR150-3]No.38 笹原敏浩 No.79 奥口隆弘
[AR150-4]No.607 関山淳
[AR150-5]No.155 森本聖
Challenge Cup
[SR]No.2 八講めぐみ
[AR150-2]No.90 國生政義
[S300]No.202 神田幸治選手
Photo
小西秀宗、後藤健太、西口大介、あず
圓城寺佑亮 (Special thanks)
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【最速の名に懸けて】
今年もまた"日本一"の栄冠を手にする為に、全国から各Rd.を戦い抜いた最速のアルファ遣い達が、FSWに舞い降りる。
早朝7時。
凛(りん)とした空気が心地良いFSWのピット。サーキットから空を見上げると、澄んだ空気が一段とまた空を高く押し上げている。どこまでも晴れ渡る青い空と、雪化粧を纏(まと)う霊峰富士のコントラストが美しい。
昨年同様、統一戦という晴れ舞台に相応しい、雲一つない快晴となったサーキットコンディション。いつものRd.とは違った統一戦という誉(ほま)れの舞台にSTiLENiAメンバーにも昂揚感(こうようかん)と緊張が入り混じる。
STiLENiAからは、年間ランキング上位のみが参戦資格のあるCHAMPION CUPに16名、来季のポイントを見据え2名がChallenge Cupにエントリーした。
【レースC エントラント】
最速の称号、SRクラスからは3名。
今シーズン、年間Rd.関東・中部1位と総取りした#11アゲマツ(156GTA)。4CやABARTHといった新世代のマシンが徐々に増えて来たARCだが、変わらぬ"156LOVE"を貫き、旧世代の声も聞かれる156の伸び代(しろ)や可能性に懸けている。昨年念願の統一戦初制覇を果たし、2連覇に期待が掛かる。
#85拓ちゃんも、多忙なスケジュールを縫って、この統一戦に並々ならぬ決意を以(もっ)て臨む。験(ゲン)の良い妻のめぐりんの#85深紅の4Cで、2度目の"日本一"を掴みにいく。(関東3位)
安定感のある走りが持ち味の#39ひでよし=西澤はん(147GTA)。クレバーなドライビングに表彰台の期待が掛かる。(関東6位)
SR2クラスは、今期MiTo黄色ちゃんで初参戦にして、(SRクラスのアゲマツと同様に)年間Rd.関東・中部1位と総取りした#101飛雄。
photo 西口大介
STiLENiA総監督の#13 P様(GT2.0JTS/MT改)が年間Rd.関東・中部2位からSR2クラスでは自身初となる"日本一"を狙う。
関東Rd.3でクラス初優勝した#422 あっず(156JTS)も秘めた熱い闘志を胸に勝機を伺う。(関東3位)
MR300クラス、"鬼斬(おにぎり)Monster" ABARTH 500に箱替えし、この統一戦からシェイクダウンとなる#10きむぅー。(関東2位)
photo 西口大介
MR200クラス、150-6 #77セガミン(145TS)も(アゲマツ、飛雄と同様に)年間Rd.関東・中部1位と総取りし、"日本一"を"しまむらLOVE"パワーで獲りに行く。
AR300クラス、男気溢れる重量級166を駆り、年間Rd.関東・中部2位で迎えた、#100イチロー。エンジン、ミッション、駆動系、取り替えた部品は数知れず。最近はマシントラブルも収まり、安定したドライビングでタイムアップ著しい。
普段は頼れるStileの敏腕メカ、#45よしあき(GT3.2)。メカの合間を縫って参戦したポイントで掴んだ関東4位。#100イチローとの同クラス対決が楽しみである。
以上がレースCとなる。
【レースA エントラント】
AR250クラス。gtv3.0を駆り、冷静沈着で安定感あるドライビングが信条の#321原田。年間Rd.関東1位の自信と誇りで、レースA総合優勝に期待が掛かる。
参戦台数の多い150-2を関東Rd.年間1位・中部2位と好成績を残した#74"長老"猪股(156/2.5V6)。
Threehundredの#199ぽっけ選手(PUNTO Evo)も年間Rd.中部1位、関東・関西2位を提(ひっさ)げて、立ち開(はだ)かる。
好敵手が多く激戦の150-3を継続した参戦で、今シーズン年間Rd.関東・中部2位を掴んだ、#38トッシー(145TS)。
ARCは関東Rd.1筑波戦のみの参戦であったが年間Rd.関東5位に滑り込んだ"袖森マイスター"#79奥口(156JTS)。
同じFSWで行われた7月の関東Rd.3で、最終LAPの最終コーナーでガス欠になったりと、お茶目な一面もある(お孫さん誕生間近とは思えない)ダンディおじいちゃん、150-4 #607セキジュン(147TS)。今回、関東Rd.栄えある年間1位で臨む。
参戦したRd.は、ほぼクラス優勝を飾った155マイスター、150-5#155モリリンも年間Rd.関東1位の誇りを胸に"日本一"を狙う。
【レースB エントラント】
photo 西口大介
唯一、午前中の予選となったChallenge Cup。
注目は来期SRクラスに本格復帰する"STiLENiAの姫"、#2めぐりん。注目は白4Cでのタイムであるが、久し振りのFSWにも関わらず、1'57.483を叩き出す。(総合3位/クラス2位)
拓ちゃん曰く「めぐりんの方が速い!」と舌を巻くドライビングテクニックに決勝も注目である。
他に150-2クラスに#90國生(156/2.5V6)2'15.198(総合9位/クラス2位)と、S300クラスに#202神田選手(メガーヌRS)2'05.270(総合5位/クラス1位)が、11:44からの予選を終えた。
【渾身の予選アタック開始】
photo 小西秀宗
レースA、Cの予選アタックは、それぞれ午後から開始という事もあり、エントラントも慌てる事なく、思い思いにその決戦に備えている。
13:00。いよいよレースAから予選アタック開始。
photo 西口大介
A250クラスの#321原田が2'07.417で貫禄のPPを獲得。
150-2、#199ぽっけ選手が2'09.667で総合4位/クラス3位。
photo 西口大介
そして、"長老"#74猪股、2'10.213で総合5位/クラス4位で続く。
結果、150-2クラスが上位を占める大混戦となり、レースA決勝の見どころの1つだ。
150-各クラス、赤(モリリン)、黒(セキジュン)、黄(トッシー)のSTiLENiAオッサンチームの明暗は。
150-3#38トッシーが2'13.949で、総合14位/クラス2位と大奮闘!今シーズンもコンスタントに参戦し、黄145を完全に自分のものにした。
#155モリリンは、2'14.554を出し、150-5クラス1位(総合16位)を取るも、ミッションブローの憂き目に遭い、1コーナーのエスケープゾーンに退避し終戦。決勝リタイアとなった。"チキンでも勝つサンド"の験(げん)を担いで臨んだ予選アタックでクラス1位を獲っていただけに残念だったが、流石155マイスターの称号を持つモリリンの面目躍如といったところか。
本人曰く、「2016シーズンはアクシデント続きだったからしょうがない~」と周囲に零し、笑いを誘っていたが、器の大きさを感じるし負けず嫌いなモリリンゆえ、来シーズンは更なるアップデードで挑んでくるに違いない。
photo 西口大介
150-4#607セキジュンは2'15.377で総合21位/クラス3位と、表彰台を狙える位置に着けた。
初めてFSWを走る150-3クラスの"袖森マイスター"#79奥口は、2'18.066で総合27位/クラス5位となった。
13:32。レースC予選アタック、スタート。
photo 小西秀宗
ポールポジション(PP)はアゲマツ。予選僅(わず)か4LAPで1'56.142を叩き出した。予選総合2位は#806鉢呂選手(1'56.283)、3位#52小西選手、4位#85拓ちゃん(1'56.769)、8位#39ひでよし 1'58.552と上位9位までをSR勢が占め、更に上位4位は'56秒台というハイスピードなバトルが予想される。
~数年前まで、FFのアルファでFSWを「(2')分切り」するのは、至難の業(わざ)と思われていたことを思うと隔世(かくせい)の感がある。
photo 西口大介
photo 西口大介
SR2は、#101飛雄が2'04.492で総合18位/クラス1位。#13 P様が2'04.622で総合19位/クラス2位。#24大蔵選手が2'04.711でクラス3位に着ける。2Lクラスで驚異の'4秒台を叩き出したのは、SR2の中でも別格のこの3名。
アゲマツも2Lクラスで'4秒台というハイレベルに驚きを隠せない。
#422あっずは、予選のこのタイミングでエアフロの不調が出て、2'08.091で総合29位/クラス6位と出遅れた。
photo 西口大介
AR300クラス対決は、#100イチローに軍配が上がった。FSWに向かう早朝の高速からトラブルでローダーに運ばれながらピットに到着した。迎えた予選で見事この鬱憤(うっぷん)を晴らす。(総合23位/クラス2位)。
photo 西口大介
#45よしあきは、2'07.205(総合27位/クラス3位)。
イチローの'5秒台の結果にはアゲマツも喜んだが、予選終了時にミッションケース破損により無念の決勝リタイアとなった。よしあきとの決勝が楽しみだったが、来期に弾みが出るタイムにイチロー本人もご満悦の様子。
お祭り男、肉メン#77セガミンは2'08.324(総合30位/クラス3位)から表彰台を狙う。
ABARTH500のシェイクダウンとなった#10きむぅーは総合31位/クラス6位と下位に沈む。
「ライン取りとクリッピングポイントが前車のGTAと変わるが、まだABARTHの特性を生かした走りが出来ず、GTAの走りをしてしまっている。」とアゲマツからアドバイスを貰い、決勝に備える。
【白4Cが躍動する】
14:27。タイスケから約20分遅れでレースB、Challenge Cup決勝が始まる。
photo 西口大介
めぐりんが終始、PPの#203ボクスターSと、同クラスであるSRの#95 4Cと接戦を演じ、見事総合3位/クラス2位でフィニッシュ。来シーズンに向けた復帰戦を、ブランクの感じさせない危なげないドライビングを披露し、我々に鮮烈な印象を与えてくれた。
#90國生も終始丁寧な走りで、総合8位/クラス1位と来シーズンの150-2クラスの参戦ポイントを稼いだ。
S300クラス、#202神田選手は総合6位/クラス1位。メガーヌRSの実力の片鱗を見せた。
【波乱の予兆】
photo 後藤健太
時計の針は15時前。
昼までは、コース上に穏やかで柔らかな陽が降り注ぎ、春の様な穏やかさだったFSWも、吹く風にひんやりと冷たい空気が紛れ込んでくる。
「レースA・C共に、晴れの決勝の舞台、無事に走らせてあげたいな。」SSTの斎藤が呟く。
ここまで、AR300クラスの#100イチローと150-5クラス、#155モリリンが予選で好タイムを刻んでいたにも拘らず、共にミッションブローの憂き目に遭い、無念の決勝リタイアとなっている。
"富士には魔物が棲んでいるのか?"
例年、波乱含みの展開となるのが統一戦の舞台。
「最高の舞台を最高の状態で走らせてあげたい。」誰もがそう思いながらも、今年もまた波乱の幕開けとなっていく。
【コーラの落とし穴】
photo 西口大介
14:48。15分遅れでレースA決勝がスタート。
エントリー29台に対し、28台のマシンが決勝のグリッドに並ぶ。
PPの#321原田が幸先良く飛び出し、そのまま頭を獲る。続いて#36"小犬"MiTo QV 藤本選手、#199PUNTOぽっけ選手、#483"TEZZO"柴崎選手が続き、#74"長老"猪股が追う展開。
その先のコーラで、#199 PUNTOがクリッピングポイントに着くが出口でリアがブレイク。制御を失いながらアウト側のエスケープゾーンまで飛んでいくフルスピン。
後続マシンのクラッシュもないのが幸いだったが、これにより#199 PUNTOは一旦、最下位まで沈む。
そしてダンロップでは、#36"小犬"MiTo QV藤本選手に#321原田gtv3.0がオーバーテイクされる。
直ぐ後ろには同じgtv3.0を駆る#483"TEZZO"柴崎選手が迫る。
上位陣の順位に変更はなく、レースは終盤に差し掛かる。
#321原田もリズムを掴む。4LAPに入るホームストレートでMiToを獲え、抜き去ると、その後は再び独走状態。
普段から仲の良い二人。オーバーテイク時には手を振る余裕をみせ、残りのLAPをそのままトップを守り、チェッカーを受けた。
しかしレース終了後、事務局より"ジャンプスタート"のペナルティを受け+30sec加算となる。
総合8位/クラス1位と降格順位となった。
原田自身、スタート時にフライングした自覚はあった様でペナルティに嘆きながらも、クラッシュ無くTOP争いに絡めたレースを満喫出来て満足気な表情を浮かべた。
一旦、最下位に沈んだ#199ぽっけ選手も、そこから怒涛のオーバーテイクショー。
1.4Tの直線の速さは、他マシンの加速の比ではなく、LAPを重ねる毎に中団まで順位を回復してみせる。総合9位/クラス5位。怒涛の追い上げをみせるもTOP集団に迫る前にチェッカーとなったが、それでも序盤のスピンを挽回する熱い走りだった。
photo 西口大介
最後までトップ争いを演じ、目の前でスピンしたPUNTOに気を削がれる事なく、集中力を切らさずにレースを終えた#74 "長老"猪股。総合3位/クラス3位の結果と共に、流石、長年のレース経験の賜物である。
#38トッシーも、中団の位置で並み居るライバル達の中で孤軍奮闘しながら、予選の順位を落すことなく決勝でも躍動していた。
その上をいく大健闘を演じたのは、同じ150-3の#79奥口である。予選総合27位から大幅にジャンプアップの総合16位/クラス4位と、表彰台まで後一歩まで迫った気迫溢れる走りを披露した。
photo 西口大介
#607セキジュンも、レース中盤までは快調な走りを披露。4LAP目に自己ベストを更新、クラス1位に躍り出た5LAP目に2度スピン。攻めた結果のコーラと、焦りの出たヘアピン。一旦最下位まで落ち、残り3LAPで何とか追い上げるも、総合24位/クラス4位と表彰台まで後一歩のところで終えた。
【波乱の1コーナー】
富士の裾野に沈みゆく太陽が、ダンロップを紅く染め上げる。
16:00。夕陽に昏れなずむサーキット。
タイスケでは、15:30スタートのレースCだったが、1回目のスタートで100RでスピンしたABARTH 695ACに後続の147GTAがクラッシュし、コース上にクーラントが飛散し、その片付け処理に時間が掛かっていた。
この処理に20分近く要した。ジリジリと時間だけが過ぎていく中、事務局の当初の判断は決勝3LAPリスタートだったが、FSW側の粋な計らいで決勝5LAPとなった。
とはいえ3LAPの減算。果たしてどういうドラマが待っているのか?
各マシン、再度グリッドに着きスタートの瞬間を待ち侘びているが、2回目のフォーメーションラップも省略された為、タイヤは完全に冷えている。
16:01 リスタート。
photo 西口大介
スタートシグナルの赤がブリッジに灯(とも)る。各マシン、エンジンに火が入る。5つのシグナルが順に静かに消えていく。ブラックアウト。
次の瞬間、全てのマシンのエグゾーストノートが一斉にホームストレートに響き渡る。
photo 圓城寺佑亮
イン側を矢のように駆け抜けていく一台のマシン。完璧なスタートダッシュを決め、1コーナーを最初に飛び込んだのはメグリン4Cを駆る#85拓ちゃんだ。
幻となった1回目のスタートでは#11アゲマツもサイドバイサイドで制したが、リスタートの今回、圧倒的な軽さがストロングポイントの拓ちゃんの4Cに軍配が上がる。
雌雄(しゆう)を決する最初の難関と言っても過言ではないこの1コーナーを、STiLENiAの拓ちゃん、そしてアゲマツが抜け、"関西 Monster3.8"#860鉢呂選手、"Girasole"#18"むーちゃん"村山選手、"STiLENiAの殿"#39ひでよしのSR勢が、次のコーラ目掛けて攻めて行く。
photo 小西秀宗
今回、総勢9名の猛者が集(つど)ったSR勢の中に、あの"4連覇のレジェンド"#52小西選手が、この決勝の舞台に居ない。予選時、'55秒台を狙うべく、アタックモードに入った100Rで駆動系のトラブルにより、無念の決勝リタイア。僅か2LAPで貫禄の1'56.575を刻み、決勝グリッドを総合3位に着けていただけに残念である。アゲマツ、拓ちゃんも小西選手との"日本一決定戦"を楽しみにしていたはずである。
その次の瞬間、後続では悲劇が起きていた。
#1 156が1コーナーでリアがブレイクしコーナー出口でハーフスピン。すぐ後ろの#62 147GTAもクラッシュを回避しようとハンドルを切る。中団のマシン達はコース真ん中で止まった2台を上手く避けて先を行くが、後続になるにつれコース上に徐々に行き場がなくなり、コース上はクラッシュで溢(あふ)れる異様な光景となる。巻き込まれたその中にはSTiLENiA勢のマシンも。
SR2クラス総合優勝で有終の美を狙っていた#101飛雄、そして"鬼斬(おにぎり)Monster"ABARTH500のシェイクダウンとなったMR300クラス#10きむぅーのマシンが無情にもコース外で佇(たたず)む。誰が悪い訳でもない不慮のアクシデントに胸が痛む。
エントラントを思うと無念の展開。1コーナーのランオフエリア左右にはクラッシュ車両が置かれたまま、レース続行という事態となる。
アゲマツもこのアクシデントに気付いた様で、コーラに侵入するサイドミラーをしきりに何度も後続のマシンを確認する。しかし立ち止まる事は出来ない。後ろ髪を引かれながらも、前を走る4Cを追う。トップを走る4Cと156GTA。新旧アルファロメオを象徴するこの2台は、後続で起きたこの惨事を気に掛けながらも、それを振り切るように目の前のレースに集中し、石灰が撒かれ煙幕が捲き上る100Rを全開で駆け抜けていく。
【新時代の始まり】
photo 小西秀宗
追い縋(すが)るアゲマツが拓ちゃんの4Cをヘアピンで捉えるも、続く300Rの裏ストレートで4Cが異次元の加速を魅せ引き離す。
紅く染まるダンロップを、赤い新旧2台が駆け上がる。意地と気迫が篭(こも)った魂のドライビング。
後半のテクニカルセクションはコーナーが多く、拓ちゃんもレコードラインを外して迫り来る後続のアゲマツを必死にブロックする。MR(ミドシップ)という4Cの特性を上手く掴(つか)みながらコーナーを丁寧に周る。新時代の4Cか、まだ世代交代を阻(はば)むかのように立ちはだかる旧世代の156GTAか。
photo 後藤健太
13コーナーでアウトから被せようと仕掛けるアゲマツを拓ちゃんが先を読んでそのラインを塞ぐ。
次の瞬間。それを見越したかの様にアウトに振った4Cの逆、イン側を差し急勾配となるネッツを3.2V6の咆哮が叫ぶ。156GTAがトラクションを掛けながら力強くグイグイと加速していく。156GTAの後塵を拝す4C。156はそのままリアテールをスライドさせながら、最終コーナーをアウトからインに被せ、ホームストレートを力強く疾走(しっそう)していく。
photo 西口大介
しかし、異次元の加速を魅せる拓ちゃんの4C。
テールトゥノーズで喰らい付く両者。
そのまま、ホームストレートを235km/h超で駆け抜ける2台の赤。
景色は零れ落ち、色が視界から抜けていく。
最高のバトルが繰り広げられている。
中盤には156GTAのインに追いつき、サイドバイサイドでどちらも譲る気はない。
photo あず
1コーナーのポストでは黄旗が振られている。
車重からブレーキングポイントが先に来るアゲマツがV6の咆哮を鳴らしながら6→5→4→3→2と丁寧に素早くシフトダウン。
軽量がアドバンテージとなる4Cはスルスルと半馬身リードし、その先でブレーキングに入る。2LAP目も1コーナーの頭を取る。
1コーナーを抜けたコース左右には、クラッシュ車両が目に入る。
photo 小西秀宗
2LAP、3LAP目は、アゲマツがヘアピンで意地のオーバーテイクを仕掛けるも、300Rの裏ストで直ぐさま拓ちゃんに抜き返され、そのまま後半のテクニカルセクションも抑えられて、ホームストレートでは更に離される展開。
photo 西口大介
#860鉢呂選手の"Monster3.8"が100Rでシフトミスからオーバーレブ。白煙を吐きながら、300Rの下りを利用しダンロップ奥の広い退避エリアまで自走しリタイアとなった。SR勢が続々と脱落していく中、その後ろを#18むーちゃん(村山選手)と#39ひでよし、少し遅れて"ヌヴォラ3.8"#3豊泉選手が追い掛ける。
【2times CHAMPION!!!】
最終LAPのホームストレート。
何とか拓ちゃんの4Cに追い縋るアゲマツの156が痛恨のシフトミス。この大事な場面で6速が弾かれて入らない。こんな時に!!!
photo 後藤健太
加速が乗らないアゲマツの156GTAを、後続の#18 むーちゃん(村山選手)が逃す訳も無くホームストレート上であっさりと抜き去っていく。
アゲマツも何とか続く100Rでむーちゃん(村山選手)を気迫で抜き返すも、先をいく4Cとの差は縮まらず。万事休す。
#85拓ちゃんは、後半から尻上がりにタイムを上げ、LAPを重ねる毎(ごと)にコーナーリングスピードも上がっていく。終始、盤石(ばんじゃく)な走りで、2年振り2回目の統一戦制覇となった。
拓ちゃん、アルファ最速"日本一"おめでとう!!!
【祝福に包まれるポディウム】
*SRクラス表彰式
photo 圓城寺佑亮
【レースC】CHAMPION CUP
エントリー35台、決勝グリッド29台の内、フィニッシュは23台という波乱のレース展開となった。
内、STiLENiAからは、9台がスターティンググリッドに着いた。
[SR]
*表彰式後、拓ちゃんを祝福する(が悔しい)アゲマツ
*めぐりんとケンティ、ユウトちゃんの家族愛で2回目の全国チャンピオンを勝ち取った拓ちゃん!
#85 拓ちゃん 信頼出来る仲間達と最高のレースが出来るARCだからこそ、公私多忙な中でも駆け付ける。レース前、愛息ケンティから、「パパ、ぜったい1位だよ~!!!」と魔法を掛けられ、この大勝負をものにした。優勝スピーチで は、「夢は(レジェンド)小西選手の4連覇超え!」と力強く宣言。
来シーズンは、妻のめぐりんも本格化復帰。紅白4Cのサイドバイサイドが眼前で繰り広げられるかと思うと、興奮覚めやらない。
*アゲマツの信念は揺らがない
photo 小西秀宗
photo 西口大介
#11 アゲマツ この統一戦後の走行会でエンジンブローした愛機156GTA。マシンの新旧世代交代の波が押し寄せる狭間の時期だが、本人はまだまだ156GTAで闘う気持ちにブレはない。
今シーズン、最後は満身創痍だった156を来期に向けてイチから作り直すと意気込む。
まだまだ多い156ファンの為にも、アゲマツの代名詞とも言える156GTAで表彰台のTOPに君臨し続けて欲しい。
photo 西口大介
#39 ひでよし SRに昇格して今シーズンもコンスタントに参戦するも、並み居るライバル達のMonsterマシンに太刀打ち出来ないことを痛感する。何よりバトルが出来ないことが悔しい。来シーズン向けて足のセットアップに入る為、2017開幕筑波は、124スパイダーを下ろす(150-2クラス)との声も。
[SR2]
photo 西口大介
#13 P様 頼れるSTiLENiA総監督。
SRクラスの拓ちゃんと並び、双璧を成すSR2クラスでチャンピオンとなる。STiLENiAが、アルチャレ最高峰の両クラスを制覇する快挙。今回、Stileから借りたTE37、245サイズをフロントに履いて臨んだ。このセッティングがドンピシャにハマり、タイムも圧巻の2'04.154を叩き出し皆の度肝を抜いた。このFSWを2Lマシンが'4秒台という好タイムは驚愕である。本人曰く「決勝は気合いだよ!!」とのコメント。自身、SR2クラスでは初の日本一の栄冠に輝く。過去2回(2009年AR150-3クラス、2013年MR200クラス)日本一の経験はあれど、昨年の統一戦は燃料トラブルによるまさかの失速に終わっただけに喜びも一入(ひとしお)。
photo 後藤健太
#101 飛雄 プロの維持と誇りを胸に活躍の場を求めてStileのMiTo黄色ちゃんで参戦した。元々1年の期間限定で臨んだこのARC、最後の統一戦で日本一を獲って有終の美を飾りたかったが、決勝でのクラッシュでリタイアとなってしまった。しかしながら、年間Rd.関東・中部1位を総取りし、ファステストラップを連発した記録と鮮烈な走りは皆の記憶に残ったに違いない。
来シーズンはS耐への飛躍とアドバイザーとして期待したい。
photo あず
#422 あっず 決勝はクラッシュに阻まれ、#45 よしあきに続き上手く切り抜けるも、スタートで出鼻を挫かれたのが響いた。5LAP目に 2'06.151自己ベスト更新するも、レース終盤、ライバル#17おの金選手にもオーバーテイクされクラス5位に沈んだ。
来シーズンは、'5秒台を目標に更なる高みを目指す。
[MR300]
photo 西口大介
#10 きむぅー 7月の関東Rd.3で黒メタ156GTAが痛恨のクラッシュし、次期マシンは4Cか?という予想から、心機一転、ABARTH500をMR仕様のMonsterに仕立て上げ、晴れの舞台である統一戦に持ち込んで来た。
シェイクダウンとなった統一戦の決勝でまさかのクラッシュに巻き込まれる不運。長いレース人生、今シーズンはそういう年だったのかもしれない。レース終了後のピットできむぅーがアゲマツ、よしあきに「Stileの皆んなが寝ずに仕上げてくれたマシンを潰してしまってごめんない。」と目に涙を浮かべていたのが、心に響いた。
アゲマツも「クルマは直るから大丈夫だから。それよりも(チェリストである)身体が心配。」と気遣う。
ジー山デザインの往年の戦闘機を彷彿とさせるデカール含め、STiLENiA全員がきむぅーの早い復活を求めている。
[MR200]
photo 西口大介
#77 セガミンもクラッシュに先を阻まれた一人。巻き込まれずに切り抜けられたが、余りのクラッシュの多さに「再び赤旗になると思ったのに」レース続行となり、そこから挽回。ライバル#240 西尾選手GTの後塵を拝し今一歩及ばず。総合20位/クラス3位でフィニッシュ。惜しくも日本一とは成らなかったが、1年目のMR200で関東・中部Rd.年間1位を獲り、統一戦で3位表彰台は努力の賜物である。
[AR300]
photo 後藤健太
#45 よしあき クラス予選3位で決勝を迎えるも、予選1位の#53 ジュリエッタQVがクラッシュに巻き込まれ、2位の#100 イチローがミッショントラブルにより決勝棄権となったため、ライバル不在となったが、2'06.535と自己ベストを更新し、見事クラス優勝を果たした。
#100 イチロー 朝からローダーに運ばれながらも、予選タイムアタックでは、2'05.395を叩き出す。嬉しい自己ベスト更新。一つ階段を上った感のある会心の走りだっただけに、ミッショントラブルでの決勝棄権が悔やまれる。本人も朝からトラブル続きで、ジェットコースターのような一日だったと、疲れた顔を見せたが、どこか満足気な表情が漂った。
【レースA】CHAMPION CUP
決勝グリッド28台の内、5台がSTiLENiAから参戦となった。
[AR250]
photo 西口大介
#321 原田 今シーズンはコンスタントに参戦し、掴んだ年間関東Rd.1位。統一戦は袖森仲間でもある#17おの金選手よりレースを盛り上げるよう指令があり、MiToや"TEZZO" gtvとも好バトルを演じレースAを大いに盛り上げた。
ジャンプスタートをしなければペナルティ加算もなく、レースA総合優勝だっただけに勿体無かったが、本人事故なく怪我なく楽しく終われた事に満足していたのが、大人である。
[AR150-2]
#74 "長老"猪股 今シーズン還暦を迎え年初にSTiLENiA内で引退ルールを宣言していた。「周りに迷惑を掛けるようになっちゃあいけない。」と自戒の念も込めての発言だったが、結果この統一戦、群雄割拠の150-2クラスで総合3位/クラス3位で表彰台を掴む。更に、決勝では予選からコンマ5秒タイムアップし、2'09.711と2.5Lラジアルでは驚きの、'9秒台に入れてきた。これにはアゲマツをはじめ、STiLENiAメンバー一同も喜んだ。自身を律し、自分に厳しく臨んだこの一年は、心技体充実したシーズンだったのでは無いだろうか。
[AR150-3]
photo 西口大介
#38 トッシー 今シーズンもコンスタントに参戦し、中部Rd.への遠征も果たす。結果年間Rd.関東・中部2位を獲得。予選総合14位/クラス2位の好位置に着け、決勝も中団位置で揉まれながらも、踏み留まり総合14位/クラス2位と嬉しい統一戦初の表彰台。
#79 奥口 FSWでは自身発のスプリントレースという事もあり、予選ではぎこちなかったライン取りも、流石"袖森マイスター"。決勝では大幅なジャンプアップ。総合16位/クラス4位と、表彰台まであと一歩と迫った。筑波も好きだとの事なので、2017開幕戦筑波への参戦にも期待したい。
[AR150-4]
photo 西口大介
#607 セキジュン コンスタントに参戦し掴んだ年間Rd.関東1位。予選総合20位/クラス2位から、決勝では欲と焦りから同一周回に2回も単独スピンの失態を犯し、痛恨の総合24位/クラス4位にランクダウン。表彰台も狙えただけに勿体無かったが、そこがまたセキジュンの魅力でもある。
来シーズンは本来の希望No.67に戻るのか?にも注目。
[AR150-5]
photo 西口大介
#155 モリリン 年間Rd.関東1位で、前週には気合のFSWコソ練を2度敢行し臨んだ統一戦。結果は、予選でミッションブローと不運に見舞われた。来シーズンもサーキットを疾走する155の雄姿を魅せてくれることを期待したい。
*全体写真
【ARCA レースresult】
Challenge Cup
CHAMPION CUP
レースAではgtv(3.0V6) vs MiTo QV(1.4T)が、レースCでは156GTA(3.2V6) vs 4C(1.75T)という新旧アルファロメオがTOPを争う。NA同士の排気量ならば一昔前では勝負にならなかった車種同士が、技術革新の進んだ昨今では、熱いバトルを繰り広げるまでになった。
ARCにもいよいよ時代の波が打ち寄せて来ているのか?最新のアルファロメオに取って代わられて行くのだろうか?我々を魅了し続けた156や147の雄姿をまだ見続けたいし、新世代の4CやABARTHも魅力的だ。往年の155や145ほどサーキットが似合うアルファは無いのも事実。結局のところ、どのマシンにもドラマがあり人生がある。
各エントラントがそれぞれの想いを胸に臨んだアルファロメオチャレンジ。
一瞬に凝縮された人生と言うべきものが、サーキットには散りばめられている。2017年もレース懸ける者たちの眩い光の軌跡を追い求めていきたい。
photo 圓城寺佑亮
関東Rd.1は1月29日(日)筑波にて開幕戦を迎える。