Race Reportレースリポート
AlfaRomeo Challenge 2017 Kanto Rd.2 in FSW
『積み重ねた努力』
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STiLENiA DRIVERS LINEUP
[SR]No.1 上松淳一 No.2 髙橋拓也 No.39 西澤嗣哲
[SR2]No.13 高梨宏幸 No.422 内海直亮
[MR300]No.10 木村隆哉 No.20 高田康史 No.88 高山雅人
[MR200]No.25 猪股義周
[AR150-1]No.15 渡辺幸雄 No.31 須永裕貴
[AR150-3]No.38 笹原敏浩 No.63 奥口隆弘
[AR150-6]No.510 後藤芳弘
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オリヅルの方角から、NA特有の乾いた咆哮が富士の裾野に鳴り響く。
ダンロップを望む丘の上からは、まだその姿は窺い知れない。
目を閉じその方角へ神経を集中させ耳を澄ませる。
ヘアピンを抜け、300Rを下り、轟音が次第に近付いてくる。
その荒々しい雄叫びが”V6″のものだと気付くのと同時に、咆哮が姿を現す。
147と156、2台のGTAが、ダンロップのクリップ目掛けて飛び込んで来る。
ラインを外さずに旋回すると、トラックを削るようにトラクションを掛けながら、その先の13コーナーへ駆け上がるように消えて行く。
#39 ヒデヨシとライバルGirasole Racing #18 ムーちゃん2台のマシンが、しのぎを削る意地のぶつかり合い。
1コーナーではサイドバイサイドで互いに譲らず、その先のコーラでは恐怖心を振り払うようにその先へ右足に力を込める。
続く100Rでは路面のグリップを確かめながら遠心力に逆らう。
この第3セクターでは、#39 ヒデヨシが一歩リードする。
今回、アップデートした足回りのセッティングが功を奏しているようだ。
マシンの向きが楽に作れるようになり、勾配差を感じさせない力強い走りを見せている。
スタート前に降り始めた雨も今は降り止んでいる。
4LAPを終え、僅かながら#39 ヒデヨシがリードを保っている。
SRクラスに駆け上がって2年目のシーズン。
SRクラス初優勝、そしてレースC総合優勝の期待が俄かに現実味を帯びて来たが、
4C駆る拓ちゃんを始め、強豪ひしめくSR勢の猛者達が追従してくる。
レースB・Cの手に汗握る攻防。#39 ヒデヨシがトップを走り躍動している。
しかし、まだ予断は許せない。
前日までの天気予報では雨模様だったが、ドライを望むエントラントの気持ちが届いたのか、爽やかな五月晴れとなった。
国際コースとなる”FSW”を舞台に迎えたARC2017関東Rd.2。
レースAは31エントリー、レースB・Cは38エントリーと、両クラスほぼ満員御礼となるフルグリッドである。
STILENIAからは、レースAに3名、レースB・Cに11名がエントリー。
予選アタック開始は午後からとなりタイスケに余裕があるが、午前中のプラクティスから、メンバー同士で、天候やコース状態、マシンのセッティングに余念がない。
SSTの方も、大阪転勤組となった”おっさん”倉田、”かつじぃ”斎藤も駆け付け、皆に変わらぬ元気な姿を見せている。
いつものメンツと風景にメンバーも自然と顔が綻ぶ。
13:12から始まったレースA予選は、
黄色145を駆る#38 “トッシーが貫禄のチームトップ、2’15.255 総合14位/クラス3位に着け、モリリン、セキジュンの居ないレースAを引っ張る。
続いて#510 “ごっちゃん”こと後藤が2’20.502 総合27位/クラス1位。
日光走行会の常連さんが、アルチャレに本格参戦を果たし、
今シーズンKanto Rd.1 筑波から続いてのエントリー。
娘さんとそのお友達も応援に駆け付けている。
その姿がなんとも微笑ましい。
昨年末の統一戦以来のFSWとなった#63 奥口は、FSWに来るまでの高速でJTSの持病とも言えるインジェクター不良の症状が出てしまい、
予選を迎える前に今回のレースは無念の”未出走=リタイア”となってしまった。
前回の鈴鹿SP1.を2’44.131で、STILENIA一番時計で自信を以って臨んだだけに、本人も不完全燃焼だったに違いない。
「FSWには縁がないんですかねぇ?焦っても仕方ないので熱くなり過ぎないように7月頑張ります!」
と本人の弁。
サーキットの好き嫌いなく、貪欲に走ることを楽しんでいる#63 奥口。
今後の活躍が楽しみな逸材である。
13:44、レースB・C予選アタック開始。
SRクラス
本来であれば、栄光の#1を纏ったマシンで乗り込むはずだったアゲマツのマシンがここにない。
代わりに、予選アタックだけタイム計測用に持ち込んだABARTH 124スパイダーが佇む。
アゲマツ本人もFBに顛末を上げていたが、WPC加工に出したピストンリングが3.2用ではなく2.5という痛恨のミス。
結果、エンジンが組めずにエントリーしながらも、未出走となってしまった。
満を持して臨むはずだったFSWだったが、「長いレース人生。こういう時もあるよ」とアゲマツ。
その日に呑んで忘れて気分はもうスッキリ。
今日はチームメカに徹すると張り切っている。
とはいえ、昨年末の統一戦でライバル#2 拓ちゃんの軽量4C相手に、156GTAが互角に戦うには軽量化が急務と、クラックだらけとなった満身創痍のボディを全面リニューアルすべくボディ補強。
ボンネット、トランク、ドアを軽量化を図りカーボンへ。
エンジンもOHしてしっかり組み直す手はずだった。
そうして迎え討つはずだった156vs4Cの新旧対決。
もはや隔世の感とも言えるマシンの性能差を、それぞれの解によるアプローチにより、結果は互角の真っ向勝負になるだろうと、我々も楽しみにしていただけに、
今回お預けとなり残念である。
次戦以降での対決に期待したい。
そんな鬼の居ぬ間のレースB・C予選、1’59.294でフロントローを掴んだのは、#39 ヒデヨシ。
PPを獲った#18 ムーちゃんに続いて、予選総合2位/クラス2位。
メタルガスケット、アクリルガラス、足回り変更と、この日を照準に合わせ、しっかりと準備して来た。
アゲマツ同様、ドライカーボンドアを発注したが、それだけが唯一間に合わず、次回のお楽しみとなったが、予選アタックは幸先の良いグリッドとなった。
#2 拓ちゃんは、2’03.045と4Cのセッティングが出ずに苦しんでいる。
予選総合9位/クラス6位。決勝での巻き返しを誓う。
SR2クラス
#13 ぴたおがストレートに伸びがないと、首を傾げながらも、2’06.693 貫禄の予選総合19位/クラス1位。
今回、Cobaltリップスポイラーを装着し、更に精悍な顔付きのGTとなった。
#422 あっずは、リアのセッティングに苦しみ、2’09.313 予選総合32位/クラス4位。
MR300クラス
体調不良から暫くレースを休んでいた#88 高山が帰って来た。
本人も「リハビリも兼ねてゆっくり〜」なんて言っていたが、2’03.500で予選総合11位/クラス3位と上位に食い込み、決勝に向けて弾みのつく予選アタックとなった。
#20 “モミ”高田が、いよいよアルチャレデビュー。じーやまにもアドバイスを貰いながら臨んだ予選。
センスの光る走りで、2’05.841で予選総合17位/クラス5位。
#10 キム〜は、”鬼斬り”ABARTH 500と対話を重ねているようにも見える。
2’08.370 予選総合29位/クラス6位と下位に沈む。決勝での躍動に期待したい。
MR200クラス
#25 “長老”猪股、2’07.919でライバルGirasole Racing #240 西尾選手を抑え、予選総合25位/クラス1位。
150-1クラス
#15 コジパパと#31 すなっちのクラス対決は、コジパパが抑えた。
#15 コジパパ 2’08.292 予選総合27位/クラス3位。
#31 すなっち 2’08.356 予選総合28位/クラス4位。
昼過ぎから、風が少し冷たくなり始めた。
風の流れが幾分強くなり、上空に雲を運んで来る。
いつの間にか晴れ間は無くなり、厚い雲が覆い始めている。
15:09 レースA決勝。
天空からの雫は何とか踏み止まっているが、天候は曇り。
コントロールラインの電光掲示板は「LIGHT ON」の表示になっている。
#38トッシーが、スタートをフライングする痛恨のミス。
リズムが掴めないまま、レース中盤、ダンロップ進入でオーバーランし、危うく別マシンとクラッシュしそうになる。
#74 147がコースアウトしながら避けてくれたお陰で、危機一髪、難を逃れてくれた。
終盤やっとリズムを掴み、怒涛の追い上げを見せ予選順位を1つ上げるも、ジャンプスタートペナルティにより、+15sec加算のペナルティで13位から降格の総合19位/クラス4位とあと一歩で表彰台を逃す。
レース後、相手選手に平謝りに行くトッシーであったが、モリリン、セキジュンの居ないレースAで一人気を吐く熱い走りで魅せてくれた。
スプリントレース参戦間もない#510 “ごっちゃん”も後方スタートから、レース終盤、尻上がりに調子を上げタイムを更新していく。
3ランクアップの決勝総合24位/クラス1位と、嬉しいクラス初優勝をもぎ取った。
#38 “トッシー”笹原 2’15.187↗︎ 決勝総合19位↗︎/クラス4位↘︎。
#510 “ごっちゃん”後藤 2’19.640↗︎ 決勝総合24位↗︎/クラス1位→。
16:02 レースB・C決勝。
各マシン、コースイン。
ゆっくりとフォーメーションラップを取り各グリッドに整列する。
シグナルスタートを待つ束の間、上空に垂れ込めた雲から、辛抱出来なくなったように、ぽつりぽつりと雫が落ちてきた。
コース上には薄靄(もや)が立ちこめ、ホームストレートの各グリッドから1コーナーはおぼろげに見えるコンディションになっている。
全車ライトオンの指示が出されている。
スタートシグナルの赤丸が5つ灯る。
全てのマシンのエグゾーストノートが脳を刺激し、五感を通じて全身に反響する。
スタート5秒前。1つずつ赤丸が消えていく。
消灯。
一瞬の静寂に包まれる錯覚に陥(おちい)りながら、息をのむ。
一斉にコントロールラインを通過していくマシンたち。
フロントローに着けた#39 ヒデヨシが、抜群のスタートダッシュを決めて、1コーナーを先頭で突っ込んでいく。
9番グリッドだった#2 拓ちゃんも、一気に5番手までジャンプアップ。
#88 高山、#20 “モミ”は混戦を避けアウトから。
#13 ぴたお、#15 コジパパは集団の団子状態の中でも綺麗にイン側をトレースしながら抜けていく。
#25 “長老”はアウトから様子見、#31 すなっち、#422 あっず、#10キム〜が後団から続く。
2LAP目。ホームストレートをテールトゥノーズで疾走していく2台のマシン。
1コーナーを#39 ヒデヨシのインに割って入ろうと#18 ムーちゃんが仕掛ける。
#2 拓ちゃんも調子を上げて、4位までオーバーテイクしてきている。
一瞬も目が離せないレース展開に皆が固唾を飲んで戦況を見守る。
第3セクターのテクニカルセクションでも、先頭2台の攻防が続く。
レース終盤、5LAP目。
#39 ヒデヨシは集中していた。
ダンロップからの後半セクションも1位を死守しながら駆け上がる。
スタートダッシュを決め先頭に躍り出るも、先行して#18 ムーちゃんにやられるレース展開は何度か経験済み。
ドキドキしながらも「落ち着いて自分の走りをすれば抜かれることはない」と自分に言い聞かせながらLAPを重ねる。
少しずつマージンが出来てきた終盤、少し余裕を持てた。
13コーナーを必死に追い縋(すが)る#18 むーちゃん。
突如156GTAのマフラーが白煙を吹く。
プリウスコーナーでエンジンルームから大量の白煙を上げ失速していきコースアウト。
痛恨のエンジンブロー。
16:12 赤旗が振られ、レース終了。
5LAP目に勝負が着いた。
最終8LAPを迎えずして、4LAPカウントでのリザルドとなる。
#39 ヒデヨシ 総合優勝!!!
初めてのレースB・C総合優勝と併せ、最高峰のSRで嬉しいクラス初優勝。
#1 アゲマツや関西の雄 #860 鉢呂選手が居ないレースだったとはいえ、積み重ねてきた努力が見事開花した瞬間だった。
タイムでも4LAP目にレースB・C、ファステストの1’58.480を刻み優勝に花を添えた。
#39 ヒデヨシ 1’58.480↗︎ 決勝総合1位→/クラス1位→。
予選はマシンセッティングが出ず、思うようにアタック出来なかったが、決勝ではキッチリとアジャストした#2 拓ちゃん。
#1 アゲマツ不在のレースだったが6ジャンプアップの3位でフィニッシュししっかりと表彰台をものにした。
#2 タクヤ 1’59.216↗︎ 決勝総合3位↗︎/クラス3↗︎位。
スタートで後続のライバル#17 おの金に先行を許し後を追う#13 ぴたお。
勝負の分かれ目は、1LAP目の最終コーナーだった。
アウトに膨らむ#202 Z4のインを刺そうと瞬間、Z4もインに寄ってくる。
慌ててブレーキングしアウトに避ける。
この僅かな減速により続くホームストレートでの加速に響き、中団に沈むこととなる。
その後、周りをMR300、AR300、150-1クラスのマシンに阻まれ、
各コーナーのテクニカルセクションでオーバーテイクを魅せるも、ホームストレートで3.2Lマシンに追い付かれ離される我慢のレース展開。
終始果敢に攻めるも、5LAP目で赤旗終了となり挽回虚しく惜しくもクラス2位。
不完全燃焼なレースとなった。
しかしながら、随所で安定した盤石な走りで観る者を魅了した。
#13ぴたお 2’08.729↘︎ 決勝総合20位↘︎/クラス2位↘︎。
#422 あっずもまたスタートから別クラスの3.2Lマシン相手にと抜きつ抜かれつのデッドヒート。
毎周、後半のテクニカルセクションで意地のオーバーテイクを仕掛け抜き去るも、大排気量のマシンにストレートで離されるという熱いバトルを繰り返した。
怒涛のオーバーテイクで8ジャンプアップし、4位入賞を飾る。
#422 あっず 2’08.523↗︎ 決勝総合24位↗︎/クラス4位→。
一時は14位までランクダウンしたが、その後予選順位まで取り戻し、強豪犇めくMR300クラスで意地の2位。
復帰戦となる久し振りのレースで、視力、体力が万全でない中、レース勘と気力でレースを制した。
終始アグレッシブに攻め、観る者の魂を熱く揺さぶるドライビングを披露し、表彰台を勝ち取る。
#88 高山 2’04.729↘︎ 決勝総合11位↘︎/クラス2位→。
3月のETCC耐久で、アルファロメオでレースデビューを飾った、スティーレ敏腕メカの#20 モミ。
卓越したセンスで、かつてはアゲマツ初号機から巡ってじーやまが引き継いだ伝説のマシンを、モミが駆る。
LAPを重ねながらマシンと対話しているようにも見え、新たな伝説の幕開けに期待したい。
#20 モミ 2’06.261↘︎ 決勝総合18位↘︎/クラス4位↗︎。
#10 キム〜もまたマシンとの対話を重ねているのかもしれない。
ここに来てようやくセッティングも決まりだし、後はドライバーとの相性の感もある”鬼斬モンスター”ABARTH 500。
他に類を見ないドンガラABARTHを駆り、予選より2sec縮めてみせた。
#10 キム〜 2’06.994↘︎ 決勝総合26位↗︎/クラス5位↗︎。
#25 “長老”が巧みなレース運びでドンガラSタイヤの黄色156を完全に自分の色にした。
格上のSR2クラスのマシンと互角のレース展開。
4LAP目にはクラスファステストラップを刻み、クラス優勝に花を添えた。
#25 “長老” 2’09.239↘︎ 決勝総合23位↗︎/クラス1位→。
ここ最近のレースはマシン不調によるリタイアが続き、満足なレースが出来なかった#15 コジパパだったが、
決勝では同チームの#13 ぴたおや#20 モミと終始抜きつ抜かれつの熱いバトルを展開し、
手応えのあるレースとなった。
クラス3位にも関わらず、3LAP目に刻んだクラスファステストラップが、その実力の片鱗を物語っている。
#15 コジパパ 2’07.937↘︎ 決勝総合21位↗︎/クラス3位→。
ここ最近は年イチ、この5月の参戦が恒例となった感のある#31 すなっち。
当時の仲間達が一人ずつ147GTAを降りていく中、変わらぬ愛情と愛着で相棒としてそこに佇んでいる。
無理をしないクレバーでテクニカルなドライビングを随所に魅せた。
#31 すなっち 2’09.648↘︎ 決勝総合28位→/クラス5位↘︎。
【ARCA レースresult】
次戦、関東Rd.3は7月2日(日)FSWにて開催。