Race Reportレースリポート
ETCC2016 vol.2 FUJI-1day Special in FSW
『繋ぐ絆』
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STiLENiA DRIVERS LINEUP
ETCC SPRINT
[S200]No.100 前田一郎
Endurance 4.0h
[OC2000]No.103 倉田健 猪股義周 上松淳一 山路健史
[TR1000]No.201 (監督)清塚佳正 藤田徹 長谷川順一 乙部博則 入江保 小野純平
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レースも中盤に差し掛かった頃。スピーカーから実況アナウンスがピットに流れてくる。
「チーム名"さよならおっさんの会"ですが、おっさんとは誰なんでしょうか?そして"さよなら"ということは、おっさんは何処に行ってしまうのでしょうか?興味が尽きませんねー」
ピットレーン辺りで戦況を見守っていたSTiLENiA達からも、どっと笑いが起きる。
これには、当のおっさんも堪らず、
「おっさん、おっさん、うるさいわっ!誰がおっさんやねん!おっさん言うな、ったくー。がはは」
倉田のおっさん、アナウンスをヤジりながらも満更でもない様子である。
スタートから2.5h経過し、時計の針は15:30辺り。レースも折り返し、後半に入っている。
チーム名"スティレニア・さよならおっさんの会"。
アルチャレ古参エントラントであり、STiLENiAの"いぶし銀"こと倉田健が春に東京から異動することになり、ラストランにこの4h耐久を選んだ。同じく古参の"長老"猪股が挙げた声掛けにG山が漢気を魅せ、アゲマツが呼応した。
駆るマシンはおっさんの原点、156。カーナンバーもこれまた"103=おっさん"と読めなくもない。役者が揃い舞台は整った。
その"おっさん号"。10番手スタートから快調に順位を上げて一時は4位まで浮上していたが、今はピットでジャッキアップされている。
残り1.5h余り。第3スティントのアゲマツの周回時、ドラシャトラブルで緊急ピットインを余儀無くされていた。アゲマツはレーシングスーツのまま、よしあきと直ぐに修理に取り掛かっている。応援に駆け付けたミヒロもサポートに入り、なんとかコースに復帰出来るよう懸命のリカバリーに当たる。
ジリジリと過ぎて行く時間。
第4スティントのG山も焦燥感を抑え、静かに戦況を見守りピットで集中力を切らさずに佇んでいる。
ピットの中にいる"おっさん号"は周回を重ねる事が出来ず、懸命の修理に動く3人以外は時間が止まっているようにさえ見える。コース上が気になり、ピット ロードまで足を延ばす。そこからコース上に目をやると、少し前からパラついていた雨は次第に雨足を強め、今は完全にフルウェットのコンディション。
隣にいる倉田や猪股が、コントロールラインを通過して行く他チームのマシンを目で追っている。
さらに雨粒が大きなる。イエローフラッグが振られこの時間帯、初めてペースカーが入る。
「ヨッシャー!直ったよー!」
「下ろしまーす!」
アゲマツの声に続けて、よしあきがジャッキを下ろす。
繋ぐ襷、紡ぐ絆。
G山がコクピットに収まり、倉田がハーネスを締め上げる。倉田の気持ちを受け取るようにG山がコースに飛び出していった。襷が繋がった瞬間だった。
予報とは裏腹に午前中は快晴となったFSW。午前中に行われたETCC SPRINT S200クラスをドライコンディションの中、気持ち良い走りでクラス優勝&タイム更新した#100イチロー。
この流れに乗りたいところだが、耐久レースの始まる午後から雲行きが怪しくなり、次第に雨雲も垂れ込めてきた。
恒例のTeam GT #201は今年は1番目のピットスタート。清塚が監督を務め、とーる・ハセジュン・otb・Jpの2.0GT全4台で襷を繋ぐ。タモツはマシントラブルによりサポートに回っている。
OCクラスはドライバー交代と給油、TRクラスはゼッケンの貼り替えとポンダーの付け替えをこなす。全16チームのエントラントがそれぞれにチームワークを発揮し、コース上で熱戦を繰り広げている。
開始から2h過ぎ。サーキットを包み込んでいる雨雲からとうとう雨粒が零れ落ちてきた。その後は降ったり止んだりと目紛しく変わる天気の中、"Team GT"は大きなマシントラブルもなく確実に襷を繋いでいく。
ドラシャを直した103号車のG山がピットに戻って来る。エアクリから雨を吸い込んでしまったのか、エンジンが吹け上がらず不調のようである。
アゲマツとよしあきがエアクリの吸い込み口を変え、エアフロを交換する。
鋭い吹け上がりと力強いエグゾーストを取り戻し、コース上に復帰していく。
ゴール時間まで残り30分。
"Team GT"はJpが、"おっさん号"は倉田がアンカーを務める。フルウェットだった天候も曇り空に変わり、薄暮がかるコース上のマシンはライトオンになっている。
16:50過ぎ。各車の完走を労うようにチェッカーが振られる。
仲間達はピットから飛び出し、フェンスにかじり付く。そしてGTが、156が感動を分かち合うようにパッシングで応えゴールラインを通過していく。
ハザードを焚きながら噛み締めるようにラストランとなるFSWを周回し、ピットロードに戻って来る2台のマシン。
ピットにいるメンバーから水を掛けられる手荒い祝福を浴びながら、全員で完走の喜びを共有した。
アンカーを務めた二人は共に、東京から旅立つ共通点があった。
けれど、離れていても人はいつだって繋がることが出来る。スティーレという箱を通じて、素晴らしい時間を共有し、見えない絆で結ばれているのだから。
レース結果と各チームのベストラップは、
[OC2000] "スティレニア・さよなら おっさんの会"#103 BEST 2'12.395/49LAP
総合14位/クラス1位/82周
[TR1000 ] "Team GT" #201 BEST 2'25.515/15LAP
総合13位/クラス3位/84周
【ETCC レースresult】
写真提供(あっず、あず、西口大介)