Race Reportレースリポート
Twinring MOTEGI 中編
『本気を楽しむ!』中編
idlers Games 12Hours Endurance 2016
開始から6時間。
"12時間"という耐久の折り返し地点を過ぎる。
幸いにも黄色MiToはコース上を走れているが、他チームに依っては給油の手立てがなくピットで立ち往生しているマシンもあり、ピットエリアはさながら野戦病院の様相と化している。
「一度に給油出来る上限が20L以下」という12耐のレギュレーション。
黄色MiToの燃費量を考えるとアタックモード時はほぼ毎回給油となる燃費効率。
交代給油時に「ガソリンが手元にない」という事態だけは何としてでも避けたい。
『(アナウンス)携行缶の予備を持っているチームは何缶購入しても構いませんー』
レギュレーションでは携行缶は1つまでとの記載もあり、このアナウンスに対しても各ピットから不平不満が飛び交う。
買い出しに出た太田から着電があり「既に市内のスタンドは購入の列が出来ている」との連絡が入る。
慌てずに無事購入して来るよう返答したが、次の交代時までに間に合うか気が気ではない。
コース上ではTobbyは快調にラップを刻み、2'27前後を連発!
ピットインで9位まで落とした順位をジリジリと上げ始めていく。
12LAP(123周)には7位。13LAP(124周)〜19LAP(130周)は6位をキープし続ける。
『(アナウンス)ガソリンスタンドの決済システムが復旧しましたので、ガソリンを外まで買いに行かなくても大丈夫ですー』
情報が錯綜しピット内も混乱を極める。
急いで買い出しに出た太田に電話確認すると混んではいたが「無事にガソリンを購入出来た」との返事。
既にモテギに戻る帰路中と聞き、ピットの皆も安堵の表情を浮かべる。
やはりこの"12耐"今年も何が起きるか予測不能だ。
(JAPAN SPIRITS®)
ピットでの喧騒を余所(よそ)に、コースを疾走するTobbyは輝きを放ちながら鮮やかに躍動し軌跡を描いていく。
20LAP(131周)には4位まで上り詰め、14:36最終23LAP(134周)目にはTOP3に食い込んできた。
黄色MiTo全スティントの中で最多LAP。これはコンスタントに速いLAPを刻んだ証拠でもある。
瞬間風速とはいえ車種的にも不利なアルファロメオがこの時間帯に総合3位まで上り詰めたこと。
この戦況にピット内にいる他チームも含め色めき立つ。
(*Leader towerの3位に表示される)
遡(さかのぼ)れば昨年までLeader towerに表示されることを夢見ていたチーム。
しかし今年は更に上を見据える。
狙うはTOP3/クラス優勝である。
手応えとして毎年積み重ねてきた確かな実感が"このチーム"にはある。
暑さと疲労が重なりDr.への負担が堪(こた)えるこの時間帯。
第9スティントから第12スティントまで、各40分/15LAPをターゲットに繋ぐ作戦。
それを前にメカのヨシアキとモミップが右Fタイヤの交換作業に踏み切る。
給油チーム、Dr.サポート、メカ、全員のチームワークによって最短時間で終え、次のスティントに送り出す。
(JAPAN SPIRITS®)
(JAPAN SPIRITS®)
第9スティント西澤、交代直後の2LAP目までSCが入る。
90度コーナーでの処理だったために裏直(ダウンヒルストレート)では完全に車両が停止するぐらいの区間もあり我慢のドライビングが続く中、5位(149周)をキープし、15:37 第10スティントのたくちゃんへ。
第5スティント同様、集中力を保持した冷静沈着なドライビングはこのスティントでも健在で、序盤前方を走るアストンに手を拱(こまね)いている隙に同クラス最大のライバル243号車PAZZO 106にビクトリーコーナーでオーバーテイクされるや否やアタックモード!!!
90度コーナーでその背中を捕らえるも106はピットロードへ。
ホームストレートに向かうライン上でそれを見届けると次はロータスエリーゼと接戦を演じ先ほどのアストンもそれに参戦。
ロータスをS字でパスし先行するアストンに食らい付き迎えた8LAP(157周)目。
5コーナーを左からE36BMW/アストン/黄色MiToのスリーワイドで進入すると、前を走るインテRが単独スピン。
タイヤスモークを上げながらフロントをこちらに向け、コース中央に止まるアクシデント!!!
後続車両はあわやクラッシュという状況下!
これをたくちゃんは一瞬の判断で冷静に右に回避しながらすり抜けていく!!!
中央にいたアストンは行き場を失い、急ブレーキ!!
E36BMWに続き、左に避けて事無きを得る。
間一髪、たくちゃんの見事なドライビングテクニックを垣間見た瞬間だった。
後半は赤レビンを追い掛け回し、終始たくちゃんの熱いハートとアグレッシブなドライビングに魅了された。
全Dr.の中でも群を抜いた平均LAP、2'31台というタイムが全てを物語っており、たくちゃんの12耐に懸ける熱い闘志を感じたスティントだった。
16:20。
たくちゃんが6位までランクアップし、第11スティント川井へと繋ぐ。
川井もミッションを忠実に遂行し、たくちゃんに続き平均LAP2'31台を刻みながら7位をキープ。15LAP(179周)を走り切った。
17:04。残り3時間余り。
第12スティント西澤。このスティントも第10スティントたくちゃん/第11スティント川井と同様にピットストップで一旦10位まで落ちた順位を6〜7位付近まで上げる繰り返しとなる。
12LAP(191周)目には白4Cに再三絞められてその度にコースオフする事で何とか接触を回避しながら、仕掛けてオーバーテイクした。
残り3LAPを刻もうか!というところでSCが入り13LAP(192周)目でピットインの指示。
17:42、第13スティントTobbyが吼えた!
ぴたお監督から、「燃費を稼ぎながら、タイヤを酷使せず、タイムはTobbyタイム(2'25.前後)で!」というTobbyにしか出来ないであろうミッション。
コースイン直後もSCが入り断続的に止まる中、2LAP目のV字コーナーからSCが解除。
と同時にTobbyも一気にアタックモード全開!!!
前を走る赤レビンにロックオン!追い掛ける中、ビクトリーコーナーでPAZZO 106を見つけるとホームストレートでスリップストリームにつく。
1コーナー手前で一気に引き剝がし前に出ると、続く2コーナーで赤レビンをインから刺して後方へ置き去りにする。
圧巻は4LAP(196周)のビクトリー。
911ロードスターを追い掛け裏直を175km/hまで引っ張り、ツーワイドが7列も犇(ひし)めく90度コーナーを911のインを突いて突っ込んでいく。
イン側を取らせまいとインにスライドしてくる911。その動きをまるで予測していたかのように今度はアウト側に入れ替わるTobby。
(イン側がセオリーにも拘らず、)そのままアウト側のラインを斬り裂いて続くビクトリーまでのタイトコーナーを、アウト側にスリーワイドに展開しながらホームストレートまでアウト側を舐めるようにすり抜けてパスしていった。
同じくアルファロメオで参戦するリーマンレーシング156やダマさんチーム156とのバトルも楽しむと、9LAP(201周)目の1コーナーでE2クラス1位を走るライバル、45号車カゴタニNDロードスターと相見(あいまみ)える。
5コーナーでパスするもカゴタニNDロードスターとは終始クリーンで清々(すがすが)しいバトルを展開した。
10LAP(202周)目になるとTobbyの進入スピードが高いせいもあるだろうがRタイヤのグリップが明らかに低下し、ビクトリーではお釣りを貰いそうになるのをカウンターを当てて凌(しの)ぐ。
11LAP(203周)以降に入ると5コーナーやビクトリーでカウンターステアを当てることが多くなるが、気温が下がったこともターボ車に味方してアベレージスピードは落ちることがない。
18:25全車ライトオン。
モテギのコースにも夜の帳(とばり)が落ち始める。
そんな状況下、17LAP(209周)目にはとうとうTobbyが渾身の「2'23.668.」の"FASTEST LAP"を叩き出す!!!
全LAP終始異次元の速さを魅せ付けて、黄色MiToを5位まで押し上げる。
最後までタイムが落ちることなく20LAP(212周)を積み重ねたこのスティント。
SCの入った1〜2LAPを除いた平均LAPが2'26台という驚異的な結果となり、ぴたお監督のミッションもクリアしてみせた。
(JAPAN SPIRITS®)
18:40。第14スティントぴたお監督。
コース上にはすっかり暗闇が落ちている。
前を走るマシンのテールライトがゴールへ導く"道標(みちしるべ)の灯火"のようにも見える。
残り1時間20分余り、2スティント。
現在、黄色MiToは6位を走りクラス2位。
E2クラストップのカゴタニNDロードスターに2周先行を許しライバルは5位。
"このまま今のポジションを死守するのか。"
"攻めに出る覚悟はあるか。"
・・・どうする?