Race Reportレースリポート
Twinring MOTEGI 後編
『本気を楽しむ!』後編
(JAPAN SPIRITS®)
idlers Games 12Hours Endurance 2016
19:00。
コンスタントに2'31台を刻み続けていた6LAP(218周)目、3コーナーで怒涛の追い上げでE2クラス1位を走るカゴタニNDロードスターにパスされたことに直ぐにぴたおも気付く。
だが、追走態勢で追い付こうとはしなかった。
その答えは。
全てはアゲマツの第15スティント。
(JAPAN SPIRITS®)
19:09。残り50分。
黄色MiToがE2クラストップを獲る為に"ひと勝負"打って出る!!
カゴタニがNDロードスターが"最後のピットストップ"の間に2周差を縮める作戦。
我々黄色MiToは"給油無し・左Fタイヤ交換のみ"で送り出す作戦。ライバルが"Dr.交代"だけでなく"給油"もすれば何とか同一周回に並べるはず!!!
やらずにクラス2位に甘んずるより、"1位を狙いに行こう!"と、18:45、ぴたおの第14スティント時に決めていた。
「これでガス欠したら笑い者だよね〜。でもそれもまたスティーレらしいよ、アゲちゃん!」
たくちゃんが軽口を叩きながらも、その作戦を後押しする。
前スティントぴたおも我慢の燃費スティントでタイヤとガソリンを温存した。
メカのヨシアキ&モミップがタイヤ交換を2分で終わらせる!
ピットにいる全員でピットレーンまで黄色MiToを押し出す!
「頑張って!」
さぁ!いよいよラストスティント、"アンカー"アゲマツがコースに飛び込んで行った。
・・・しかし。
その作戦は、脆(もろ)くも2コーナーに差し掛かった時に打ち砕かれる。
コーナーポストでイエローフラッグが振られている!
アゲマツも「え!SC? いま〜ッ!!!」痛恨の叫び声が漏れる。
SCのタイミングは時の運、予測不能ではあるが、ライバルのカゴタニNDロードスターはこの絶妙なタイミングでピットインした模様。しかも"Dr.交代"のみなのか?
万事休す。
SC=フルコースコーションとなる為、全車60km/hに制限される。そうなると1周=5'00.のLAPタイムとなってしまう。
これでは2周差を縮めるどころか1周差を縮めるのがやっとである。
黄色MiTo"最後の大勝負"が脆くも一瞬で崩れ去る。
結局1周=5'00.のLAPタイムは免れたが2LAP目の途までSCが入り1LAP 3'20.〜2LAP、3'49.と大ブレーキ。
SC解除後もガソリン残量と残り時間を逆算しながら走るという辛抱のドライビングが続く。
健気だったのはそんな窮状のアゲマツを知ってか黄色MiTo自身が前車に近付くと自らライトを点滅しパッシングしているかのような症状で、前車がラインを空けてくれる一助をしてくれたことだった。
しかしタイムが上がらない。
アゲマツはガソリン残量を睨みながらの燃費スティントに苦心しているようだ。
総合5位/E2クラス1位を走るカゴタニNDロードスターとの差は縮まるどころか3周差と広がった。
こうなると前方ではなく一周差で迫る後続のPAZZO 106の追い上げの方を気にする展開となる。
「(アゲマツ)ギリギリまで燃費走行で凌ぐけど、PAZZOが見えたら追い付かれないように逃げ切るよ〜」
19:30、残り30分。
満身創痍の黄色MiToと共にアゲマツが何とか周回数を積み重ねていく。
1コーナーを過ぎる時に「(ガソリンが何とか持ち、無事ゴール出来るよう)何とか祈っててね〜」と無線が入る。
ヘアピンを曲がり裏直に入ると、
「(アゲマツ)総合1位を走るマシンの前に出る事は出来ないの〜?」
「(アゲマツ)えーっと。ガソリン(残量)は何とかemptyランプは点かないまでも、残り1目盛りで非常に厳しいよ〜」
ガス欠する事なくまた後続のPAZZO 106に抜かれる事なくコントロールラインを跨いで欲しい。
それまでは2'32.前後のタイムだったのだが、この7LAP(230周)目から2'41.台と"ガクン"とタイムが落ち始める。
『(アナウンス)この12時間耐久も残り時間30分を切りましたー。この時間以降コースアウトした車両につきましてはチェッカー後の回収となりますー。』
「ガス欠したら終わりだなー。」サインボードエリアであっずが呟く。
誰もが縋(すが)るような思いで黄色MiToの無事を祈る。
19:32、9LAP(232周)目、5コーナーに差し掛かる手前のストレートで"スッ"とインパネにあるemptyランプが点灯する。
アゲマツもそれを確認した。
ガソリン残量を気にして思うように加速出来ない。
裏直に出るヘアピンでとうとうPAZZO 106にパスされる。
「(PAZZO)MiToガソリン無いぞー!抜けー!」
思うようにタイムが上がらないことでPAZZOにも黄色MiToの窮状が悟られる。
慌ててアゲマツも無線でピットに確認を取る。
「(アゲマツ)今PAZZOに抜かれたけど、まだ大丈夫なんだよねー?」
「(ぴたお)周回数では並んだけど、まだタイム差が1'20.→80秒あるから1周辺り20秒向こうが速い(PAZZO2'30、黄色MiTo2'50)けど、今のペース、、、そうだなー、3分切る位のタイムでこのまま行けば大丈夫ですー。」
10LAP(233周)に入りホームストレート上でカゴタニのロードスターの背中を見つける。
130Rで追い付きS字でハッキリと背中を捕らえる。やはり向こうも"給油"をしてないのか、ガソリン残量がないのかもしれない。
しかし不運なSCにより、今やその差はさらに4周に広がっていた。
こうなると3位以下のクラス車両に対してアドバンテージとなる"+1周"という虎の子を何とか詰められないように守り抜くしかない。
19:40。
永遠にも感じる、ラスト20分。
残り時間が今まで紡いだ11時間40分以上に長く感じる。
タイムを上げたが残りのガソリン残量との鬩(せめ)ぎ合いのジレンマに陥る黄色MiTo。
それでも何とか12時間というドラマを紡ぐ。
「(アゲマツ)あれ?これハチロクにも抜かれたけど大丈夫ー?中部idlers?」
毎LAP、裏直で同クラス勢にパスされる始末。
その度に無線でチーム名と順位を確認する。
ピットモニターで確認すると、これだけタイムが落ちてもなお辛うじて総合6位/クラス2位から一度も落ちる事なく踏み止まっていた。
19:50、15LAP(238周)にはとうとう2'59.413./1周3分ペースまでタイムが落ちる。
ぴたお監督とアゲマツの緊迫した最後の10分間が始まる。
「(ぴたお)燃費の針は最後の1Lまで動いているので、しっかり見ていてくださいー」
「(アゲマツ)分かった〜。ちゃんと見てますよ〜。ただ、、、残り10分?ホントもうガソリンヤバイのよー」
「(ぴたお)分かったー。総合1位の車両位置や、クラス車両の後続位置、調べてまた連絡入れますー」
「(アゲマツ)分かったー」
19:55、17LAP(240周)。同一周回に入ったPAZZO 106が猛然と追い上げに来ている。
「(ぴたお)PAZZOとの差が1分に縮まったー。60秒!さっきのタイムでPAZZOが29秒、アゲちゃんが52秒。その差20秒くらいしかないので燃費気にしながら45秒まで上げられますかー?」
「(アゲマツ)分かった〜。って言いたいところだけど、これもうホント燃費キツイねー、多分。うーん、、、あと残り4分。でもピットに戻るのも考えると6分位あるもんね〜。もう後続のPAZZOが迫って来るまでギリギリまで待つわ〜。ピットからも分かったら教えて。そしたら残りのこと考えずにダッシュするー」
19:57、18LAP(241)目のコントロールラインを通過。
「(ぴたお)今のPAZZOとのタイム差が34秒差まで来られたー。ただ(総合)1位を走るクルマがアゲちゃんの後ろにいるので、それがフィニッシュしたらゴールになると思われますー」
緊迫のラスト1周。
ぴたお監督がアゲマツに無線を入れる。
「(ぴたお)アゲちゃん!セクター3で84号車(総合1位のロータス)に抜かれてー!コントロールライン手前で抜かれてー!」
「(アゲマツ)あー!もー俺、今コントロールライン通過したー!!!うわー!もーギリギリだー、、、これー」
時計の針は無情にも"19:59'54."だった。
残り時間とガソリン残量を考えれば総合1位の後ろでゴールすれば、無駄に周回数を重ねることをしなくてもそこでレースは"終了"となる算段だった。
しかし。
その策は無情にも零れ落ちる。
20:00。チェッカー。
(暫定)総合1位を走る84号車ロータスエリーゼが"20:00.04."にコントロールラインを通過する。
それにより後方車両が次々とゴールとなる。
「(ヨシアキ)うわっ!PAZZO、来た、、」
「(一同)えっ!?」
そこにPAZZO 106が追い上げてきた。
コントロールラインを通過したアゲマツは事態が分からず、「(アゲマツ)あれ?これ、もうゴールしたの!?ゴールしたの!?ゴールしたの!?」
「(西澤)あーーー!(コントロールラインを20:00前に)通過しちゃったんで、この周でチェッカーを受けることになりますー」
「(ぴたお)アゲちゃん!どんなにゆっくりでもいいからかえ帰ってきてー。PAZZOはもうゴールした。ウチはまだゴールしてない。だから、どんなにゆっくりでもいいから、必ずゴールしてくださいー。あと2周走んなくてはイケマセン、どうぞー」
「(アゲマツ)そういうことねー!PAZZOがもう後ろにいるから、"ヤバイ!"と思ったけど、そういうことね!向こうはもうゴールしてんのね!分かったー!了解ー!」
「(ぴたお)そうです、そうですー。PAZZOはもうゴールしましたー。もうゆっくりでも良いから、気をつけて戻ってきてくださいー」
左目のライトも消えかかりフロントの足廻りにもジャダーを抱え満身創痍になりながら、ビクトリーを駆け上がってくる黄色MiTo。
これほどまでに無事に戻って来る事を願った周回はない。
チームの誰もがコントロールラインのチェッカーを一緒に越えようと、サインボードエリアのフェンスによじ登り張り付く。
アゲマツも、コンクリートウォール寄りにホームストレートを疾走し、仲間たちに手を振りながら"その瞬間"を分かち合う。
20:02'52.514.コントロールライン通過。チェッカー。
最後のタイムは3'00.759.
「(アゲマツ)今、無事ゴールしましたー、おつかれー。もぉーずーっとタイヤと燃費と気にしながら、、、チョーつまんねぇんだけど、こーゆーのー(笑)」
無事にゴール出来た安堵感から、もっと攻めのレース展開をしたかったと愚痴を零す。
ピットに戻る最後までガス欠が心配で90度コーナーから続くピットレーン渋滞ではイグニッションをオフにして、少しでもガソリン消費量を減らしながら何とかピットレーンまで戻って来た。
「(アゲマツ)おつかれー!おつかれー!」
12hを戦い抜いた黄色MiToから降りると、待ち構えてた仲間たち皆んなから水を掛けられる恒例の手荒い"祝福のシャワー"!!!
ラ・リオンでの祝勝会。
「(川井)本当、今年の夏は終わったなぁ。まだ梅雨も明けてないのに。」
「(はいぱー)2017年の準備に入りますか。」
「(ぴたお監督)来年は優勝旗を取りに行きます!ともに頑張りましょう!」
「(アゲマツ)僕は、外部からスペシャルなメカやドライバーやマネージャーを持たず、仲間で1位を目指したいと思っていて、それがどんどん現実味を帯びてるのが最高に楽しいと思っています。」
2016 idlers 12耐。
昨年を上回るパフォーマンスを魅せ最高の成績を残したにも関わらず、誰一人としてこの結果に満足する事がなかった。
そう。スティーレの宝ともいえるこの"スペシャルなメンバー"で見据える先は更に高みを目指している。
"本気を楽しむ!"
来年もまたこの場所でどんなドラマが待っているのか。
この仲間達とならきっと乗り越えられる。
(JAPAN SPIRITS®)
(JAPAN SPIRITS®)
2016.07.24 idlers Games 夏の12時間耐久 in ツインリンクもてぎ 公式result
全出走台数 115台
Endurance-2クラス 72台
STiLENiA Works
最終結果 スティテニアMiTo 241周
総合6位 クラス2位
(JAPAN SPIRITS®)
「皆様のご声援ありがとうございました。全ての人に感謝します。」
(スティーレ代表 上松淳一)