Race Reportレースリポート
Twinring MOTEGI
(JAPAN SPIRITS®)
『陽炎』
idlers Games 12Hours Endurance 2017
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STiLENiA DRIVERS LINEUP
[プロジェクトリーダー]上松淳一
[STiLENiA総監督 & 101号車監督] 高梨宏幸
[110号車監督】 内海直亮
[通信 & ITサポート] 西澤嗣哲 & 佐藤光圀
[SSTリーダー] 伊藤由明
MiTo 1.4T “黄色ちゃん” #101
[Dr./ドライバー]
高梨宏幸 (ぴたお)監督
上松淳一 (アゲマツ)チームリーダー
大谷飛雄 (トビオ)
西澤嗣哲 (ヒデヨシ)
156TSセレ “耐久号” #110
[Dr./ドライバー]
内海直亮 (あっず)監督
猿渡清司 (SAR)チームリーダー
山路健史 (ジーヤマ)
渡辺幸雄 (コジパパ)
入江保 (たもつ)
北村寿春 (きたむー)
奥口隆弘
伊藤由明 (ヨシアキ)
高田康史 (モミップ)
[SST(STiLENiA Support Team)]
[給油]
(101号車)
河奥晶紀 (tutu)リーダー
斎藤克治 (かつじぃ)
保科健司 (あずぱー)
瀬上透 (セガミン)
(110号車)
國生政義
田村寿
後藤芳弘
(買い出し)
黒川建 (クロちゃん)
[計時]
(サインボードエリア)
深野泰章 (はいぱー)リーダー + Dr.サポート
長谷川順一 (ハセジュン)
あかちゃん + 介護
はるちゃん + 介護
(ピットストップ計測)
小野純平 リーダー
太田詔
[記録(写真)]
小西秀宗 (コニオ)
伊藤優甫 (JAPAN SPIRITS®)
[介護 (メット・給水)]
まみちゃん
あず
りっくまん
[メカニック]
伊藤由明 (ヨシアキ) + ロリポップマン + 110号車Dr.
高田康史 (モミップ) + Dr.サポート + 110号車Dr.
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気を抜くと意識が遠のく。昏睡を振り払うように遥か遠くビクトリーロードを見据えると、朧げにもやもやとした揺らめきが浮かび上がる。照射を受けて立ち昇る煌めきがホームストレートを立ち上がって近づいて来る。コース上に熱気が混ざり合い、鮮やかな彩りとなって光の屈折を織りなしている。それはやがて轟音を引き連れて形となって姿を現わす。タスキというゼッケンナンバーを背負って、各マシンがコントロールラインを力強く通過していく。
開始から5時間余り(13:00)。
第5,6の連続スティントをヒデヨシが走りきり、第7スティントを任されたトビオが、小雨ぱらつくピットロードを飛び出して行く(12:53)。
右フロントの駆動系からゴリゴリと嫌な音を立てながら、第1コーナーに飛び込んでいった。
各マシンが周回を重ねるなか、MiTo #101はそこにいない。4コーナーを過ぎたストレートの退避エリアで、マーシャルの救援を待っている。トビオの第7スティント。
第4ピットに陣取るSSTも、ピットモニターに映し出された映像と「黄色いアルファロメオが止まっています!」というアナウンスに、状況が掴めずにいた。
不安な箇所は直したのに!
この1時間ほど前(11:40)、ヒデヨシのスティント時、左フロントのドラシャに違和感を感じ、ピットストップルール5分以降からとなるメンテ時間を7分間でドラシャ交換を終えて、(周回ロス2LAPのビハインドの計算)コースに復帰していった矢先のトラブル。
ここまで全てが順調と言えるぐらい完璧に回っていた、、、
はずだった。
104LAPで時間が止まる。
STiLENiAのチーム力が試されていた。
(JAPAN SPIRITS®)
今年もまた”熱い夏”がやって来た。
「本気を楽しむ!」をスローガンに、黄色MiTo #101と、いつものメンバーがモテギに集結する。
全104台となったエントラント。
クラス別(25〜90位)のスタート順位は88位。
ぴたお総監督の相変わらずのクジ運の無さに、一同苦笑いしながら、グリッド位置まで皆んなで手押しする。
(JAPAN SPIRITS®)
7:57。第1,2スティントを任されたエースDr.トビオが、スタートのクジ運を跳ね返すローリングスタートから圧巻のオーバーテイクショー。
9:34には、88位から84台ごぼう抜きの4位に浮上する。
第3スティント ぴたお、第4スティント アゲマツも順位を落とすことなく、総合7〜8位をキープしている。
13:02。
「えー、たった今、たった今、ドラシャが折れましたー!」
トビオの叫び声。ピットに緊迫した無線が入る。
13:23。
リペアエリアでMiTo #101の到着を待つ。
13:31。
SSTがパドック前のピットガレージまで懸命に手押しで運ぶ。
ここでアゲマツとぴたお総監督が話し合う。
疑惑のFドラシャは交換済みであることから、残るはデフではないかと疑念が懸かる。
故障原因がデフとなると、リカバリーに何時間か費やすこととなり、メカも兼任するアゲマツの負担も掛かる。
ぴたおの判断は、
「そこまでしてリカバリーしなくて良い。もうリタイアしよう。」
「直して欲しい」と伝えればアゲマツは何時間掛かってでも直す男なのは、ぴたおが一番知っていた。だからこその苦渋の決断だった。
すぐさま、サインボードエリアのハセジュンにもリタイアの決断が伝えられる。
「しょうがないんですかね〜」
#101号車のタイム計測をほぼ一人で、黙々とこなした男にも、無念の思いが滲み出る。
取り敢えず、ジャッキアップしタイヤを回す。右フロントタイヤが空転している、、、
「ん?これ右のドラシャじゃない?」
アゲマツが気付く。
「これ、すぐ直るよ!」
全員の心に火が着いた。
13:36。パドックから道を開けて貰い、急いでピットへMiTo #101を押し込む。
メカのヨシアキとモミップが素早くジャッキアップし、アゲマツと3人で5分掛からずにドラシャを交換する。
その間、サインボードエリアにも”レース続行”の意思を伝え、備えるよう指示が入る。
給油チームも、担当をローテーションしながら、完璧にこなしている。かつじぃが消化器を持ち、tutuとセガミンが20Lのガソリンタンクを抱えて給油し、あずぱーが今年から増えた給油回数シールを貼る。
各持ち場の士気が上がる。
13:43。ジャッキから下ろされ、手押しでピットロードへと送り出されたMiTo #101。
引き続きトビオが第8スティントのタスキを繋いでコースへと復帰していった。
この光景を心配して見守るように見ていた、もう一人の監督、あっず。
昨年はDr.が集まらず、サポートに徹していたが、走りたい衝動は抑えることが出来ず、今回”耐久号”#110の監督に名乗りを上げて、2年振りのSTiLENiA 2台体制の大役を果たした。
「#101号車も心配だけどさー、俺は#110号車の監督で持ち場もあるし、同じチームだけど別運営でライバルだと思ってるから、互いに信頼しているからこそ手は出さない」
そう言って、#110号車のDr.交代のサポートに入る。
元々、皆んなで走る耐久は苦手で、STILEが12耐に参加し始めた頃は、スプリントレースにしか興味がなく、耐久には参加しなかったぐらい。
それが娘のあずを連れてカメラだけ撮りに来るようになり、翌年初めてDr.で走るようになり、今年はとうとう先頭きって、監督として取り纏めをするまでになった。
参加チーム名、”オサーン祭り(髭)”と銘打ち、9名のDr.全員でサポート係も分担し、耐久を楽しんでいる。
事前打ち合わせで、Dr.もやってサポートもやると全員休む暇がない事が分かり、恐る恐るそれを皆に打ち明けると、皆んな意に介さない返事ばかりか率先して各サポートも直ぐに決まる有り様だった。さすがのあっずも「皆んな(愛すべき)バカなのか?」と思ったが、心強くもあり感動していた。
新潟から前泊で駆け付けたコジパパや、12耐でのモテギ参戦は2年振りとなるSAR。きたむーも忙しい合間を縫ってDr.を買って出た。
給油係には、Dr.経験もある國生、12耐初体験の田村とごっちゃんがサポートに入る。
ガソリン買い出しには、給油リーダーのtutuが連れて来てくれたクロちゃんが、#101号車と#110号車の両方を請け負ってくれた。
(JAPAN SPIRITS®)
#110号車のスタート順位は57位。
あっず監督の先導で、Dr.全員で和気藹々と156 TSセレ “耐久号”を手押しする。
スタートDr.は安定感で定評のあるジーヤマが務める。ジーヤマもこの日の為にレーシングスーツを新調する熱の入りよう。髪も短髪に整え気合い十分である。
第3スティント コジパパが、62位まで落ちた順位を46位まで押し上げる。
(JAPAN SPIRITS®)
たもつが第4スティントを37位まで押し上げて、無事に終えると、サインボードエリアから現時点でのチームベスト2’33.113を叩き出したことが伝えられる。
スプリントと違い、「何かトラブルが起こればそこで終わってしまう」耐久の怖さを口にしていただけに、安堵の表情を浮かべる。
第5スティントのSARも、久し振りの12耐を楽しみ、第6スティント奥口の後、給油なしエンジンオイルチェックのみを行い、第7スティント きたむーへと繋ぐ。
開始から6時間。ジーヤマがスタートDr.から2巡目となる第8スティントに入り105LAPを紡いだ。ここまであっず監督が立てたプラン通りに進んでいる。
ジーヤマがそれに応え25位までプッシュして降りて来る。介護チームが冷えたタオルを差し出し、素早くヘルメット、ハンス、グローブを預かる。フラフラ汗だくの中にも満足気な笑顔を浮かべ、子供のような笑顔を魅せる。
#110号車のどのDr.も、無事にタスキを繋げた安堵感と、誰がベストタイムを更新するのか?負けないよ?と軽口を叩き合っている。耐久本来の「皆んなで楽しむ!」を#110号車の皆が率先して実践している。
第9スティント SARが、50位まで沈んだMiTo #101号車と対照的に、32位 135LAPで繋ぐと、第10スティントで奥口が、先日のアルチャレでレースA総合優勝を果たした片鱗はここモテギでも開花しチームベストとなる、2’32.578を刻んでみせた。25位で走行を終え、尊敬するジーヤマ 2’33.673を上回り、「ジーヤマさんを抜きましたか!」と顔を綻ばせた。
あっず監督も、皆んなDr.で疲れているはずなのに、誰も不満を零さずサポートもこなし、それぞれがこの場を楽しんでいて、「本当に最高の仲間たちだよ!」と感謝を口にする。
開始から9時間(17:00)。きたむーの第12スティントを終え、リアブレーキパッドを交換する。残り3時間で初めてトラブルらしいトラブルを迎える。初監督で組んだ作戦プランとして、ここまでの時間ノートラブルでほぼ時間通りに進み、淡々と周回を重ねたことが奇跡である。
あっず監督も、156 TSセレ “耐久号” #110号車を「とても乗りやすく壊れる気のしない良いマシン」と褒め称え、更にSST含めたDr.全員の頑張りのお陰と胸を張る。
17:42 全車ライトオン。モテギのコースにも夜の帳(とばり)が落ち始める。
優勝圏内から脱落してしまったMiTo #101の方は、各Dr.は気持ちを切り替え、タイムアタック勝負に走る。燃費なんて考えずガンガン攻めて、タイヤももう1回換えて、真剣な”お祭り”モード。
開始から10時間(18:00)には、一時は62位まで落ちた順位を33位まで盛り返す。
ここで#110号車 38位を抜き返す。
11時間経過(19:00)。いよいよラスト1時間。
MiTo #101はDr.全員の巻き返しで23位まで浮上。
156 TS “耐久号” #110は37位。
第15スティント この11時間メカとして懸命に2台のマシンを守り抜いたモミップがレーシングスーツを身に纏い、Dr.交代を待つ。
隣にはあっず監督が居る。
「もし何かあったら、ごめんなさい」
皆でタスキを繋ぐ重責に、モミップの口から不安が零れる。
「なあに気にすんな!楽しんで、思い切って行って来い!」
(JAPAN SPIRITS®)
ラストスティント。
#101はアゲマツが、#110はヨシアキが“アンカー”を務める。
それぞれのサポートが全員でマシンを送り出す。
(JAPAN SPIRITS®)
(JAPAN SPIRITS®)
19:57 ラスト1周。MiTo #101は21位、耐久号 #110は31位まで追い上げる。
チームの誰もがチェッカーを見届けようと、サインボードエリアのフェンスに張り付く。
20:00 チェッカー。
#110 20:01’40.313.
#101 20:02’01.102.
ゴール。コントロールライン通過。
ヨシアキもアゲマツもコンクリートウォールに寄りながら、仲間たちに手を振りゴールを分かち合う。
そして、誇らしげに2台のマシンがピットに帰還してくる。
「(ヨシアキ)ヨイショ!さぁこい!さぁこい!」
「(アゲマツ)おつかれー!おつかれー!」
どちらも計ったかのように、レーシングスーツを脱いでパンツ一丁でフルバケシートから降りて来た。
仲間たちもそれを見越したように、遠慮なく用意していた水を掛ける!掛ける!
耐久恒例とも言える、手荒い”祝福のシャワー”!
「(はいぱー)来年からはハセジュンにサインガードのリーダー預けて、オレは110号車で下積みに入ります。」
「(#110 あっず監督)監督なんて柄でもなかったけど、プラン立てたりなんだりやってたら結構楽しい〜。
当日もサポートする皆んなの姿を見て、また感動してこっそり泣いてました。
特にガソリン買出しの黒川さんの献身的なサポートには頭が下がる思いでした。
レースの方は、残念ながら残り3時間でブレーキが終わってしまい、計算していた予定周回数には届かず、実は一昨年の高山監督の232LAP超えを狙っていたんですが、皆んなで走って皆んなでサポートして、完走まで出来たので大満足でした。
来年もまた監督やりますので、是非走りましょう!」
「(#101 ぴたお総監督)101号車は勝つためのチームです。とことん結果を求めていきます。
今年は勝てると思っていましたが、期待外れの結果で終わってしまいました。
40分の修理を行った中で、236周、クラス12位、総合21位は頑張ったと言ってくれる人もいますが、全く満足してません。結果残せなくてごめんなさい。
来年は最高の結果でお返しすることを約束します。」
「(アゲマツ)今年はドラシャの件で、早々に勝負権を失ってしまって、昨年の結果より下位に終わっちゃいました。でもそこから、真剣にしなきゃいけない時は真剣に。笑える時は笑いながら。
そのメリハリも切り替えも、同じ気持ちの人間の集まりだから楽しく終われたのかな~と思います。
頑張ってくれるサポートの皆さんとの関係も年々増してるから、来年は優勝という形で恩返ししたいと、ドライバー全員がそう思っています。
その為にも、今年の12耐は良い勉強になりました。」
2017 idlers 12耐。
誰もが昨年を上回るパフォーマンスと更なる結果を求め挑んだ今年の夏。
けれど、神様はそう簡単には勝たせてくれない。今年もまたこの結果に満足する事がなかった。
あの時見た、揺らめきを放ちながらも煌めいていた“陽炎”は、常に高みを目指している”追い求める姿”だったのかもしれない。
“本気を楽しむ!”
来年もまたこの場所で。
この仲間達となら、きっと最高の夏が待っている。
2017.07.23 idlers Games 夏の12時間耐久 in ツインリンクもてぎ 公式result
全出走台数 104台
Endurance-2クラス 66台
STiLENiA Works
スティテニアMiTo #101
最終結果 236周
総合21位 クラス12位
スティテニア156 TS #110
最終結果 231周
総合30位 クラス20位
「皆様のご声援ありがとうございました。全ての人に感謝します。」(スティーレ代表 上松淳一)