Race Reportレースリポート
Twinring MOTEGI
idlers Games 12Hours Endurance 2018
『残光』
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STiLENiA DRIVERS LINEUP
[プロジェクトリーダー]上松淳一
[STiLENiA総監督 & 101号車監督] 高梨宏幸
[110号車監督】 山路健史
[通信 & ITサポート] 西澤嗣哲
[SSTリーダー] 伊藤由明
MiTo 1.4T “黄色” #101
[Dr./ドライバー]
高梨宏幸 (ぴたお)監督
上松淳一 (アゲマツ)チームリーダー
大谷飛雄 (トビオ)
西澤嗣哲 (ヒデヨシ)
奥口隆弘 (グッチー)
156TSセレ “耐久号” #110
[Dr./ドライバー]
山路健史 (ジーヤマ)監督
入江保 (たもつ)チームリーダー
北村寿春 (きたむー)
猪股義周 (長老)
倉田健 (おっさん)
瀧本亜紀夫
斉藤敦
加瀬康弘
丸山雅弘
伊藤由明 (よしあき)
高田康史(モミップ)
[SST(STiLENiA Support Team)]
[給油]
(101号車)
河奥晶紀 (tutu)リーダー
斎藤克治 (かつじぃ)
保科健司 (あずぱー)
瀬上透 (セガミン)
(110号車)
國生政義
田村寿
後藤芳弘
(買い出し)
黒川建(クロちゃん)
金松基孝
[計時]
(サインボードエリア)
深野泰章 (はいぱー)リーダー + Dr.サポート
長谷川順一 (ハセジュン)
奥口奥さま + 介護
瀧本奥さま + 介護
(ピットストップ計測)
小野純平 リーダー
太田詔
[記録(写真)]
小西秀宗 (コニオ)
[介護 (メット・給水)】
まみちゃん
[メカニック]
伊藤由明 (よしあき) +ロリポップマン + 110号車Dr.
高田康史(モミップ) + Dr.サポート + 110号車Dr.
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ピットでは小さな歓喜が起こっていた。
スタートからちょうど3時間余り。
STiLENiA MiTo #101号車が、この12耐の総合Topを快走している。
それは、TOP10が1Lap内に犇(ひし)めく接戦の中での1コマであり、たまたま上位陣がピットインしたタイミングでの瞬間風速だったのかも知れない。
12時間という長いドラマの、まだ序盤の始まりに過ぎない時間帯ゆえ「総合シングルで終えられる」という何の確約や保証も無いのはじゅうぶん分かっている。
それでも今日までに払った犠牲や、少しずつ階段を上がって来た我々の努力、そして献身さが少しは報われた気持ちになった。
決して一人では掴めない。皆んなの気持ちが一つになって初めて掴むことが出来る、栄えある表彰台の栄誉。
それは遥か先にあると思っていたが、今は仄かに光る一筋の光が栄光となって見える。
その閃光がホームストレートの遥か先と重なり、#101 MiToがその光を追い求め、吸い込まれるように1コーナーの先へと消えて行く。
そう思いながらも、もう一人の自分が頭を叩く。
「そんなに甘くないぞ。」
そう。魔物が潜むモテギ、そして潮目が変わるドラマがあるのがこのidlers 12耐。残り9時間余り。このままで行く訳が無い。
充足感に満ち始めた感情に緊張感と睡魔が、随意(まにま)のように五感に打ち寄せる。ドライバーもサポートもそれぞれの持ち場と役割を全うすべく、また気持ちを引き締める。
午前3時。
雨が降っている。
事前の予報では台風12号が関東を直撃する懸念もあったが何とか免れている。
降りしきる雨を構う余裕もなく、忙しなく各自が持ち場の準備に取り掛かる。
今年も昨年に引き続き、STiLENiAから2台がエントリーしている。
総合上位を狙う黄色MiTo #101と156TS #110。
#101の監督は、誰よりも勝ちに拘るぴたおが務める。STiLENiA総監督も兼任である。
#110は、初監督となるジーヤマ。
4時から受付が始まり、両監督がそれぞれクジを引く。これによってスタートグリッド順が決まる。
エントリー100台のうち、
#101は、50番グリッド、#110は、34番グリッドとなった。
7時30分。ローリングスタート開始(7時55分)に合わせ、各グリッドにマシンを整列するようアナウンスが入るが、肝心の各グリッド位置のラインと番号が雨に流されてしまい各チームが混乱する。
事務局が前からスタート位置を決めていき、何とかグリッドに並べることが出来た。
それぞれのマシンの前で、メンバー全員が記念撮影。
内に秘めた闘志を誇りに臨む。
20分遅れの8時15分にローリングスタートとなる。
スタートDr.は、#101 は飛雄、#110 は長老が務める。
#101は、飛雄が今年も2スティント、2hの連続走行の重責を果たし、総合2位でぴたおにタスキを渡す。
#110の2番手はタモツ。
コースにはまた雨が落ちてきている。3Lap目、セカンドアンダーブリッジを過ぎ、ビクトリー手前で、リアが滑って一気にランオフエリアまでコースアウト。
オフィシャルに引っ張って貰い、1周後ピットイン。状況説明と車両点検をし問題ないことを確認。砂利を除去しまたコースへと復帰していった。
その間、#101は飛雄が圧巻のスティントで、順調にランクアップし続けている。
#110はジーヤマ、そしてきたむーと続く。
出鼻を挫(くじ)く流れを作ってしまったと自責のタモツがきたむー駆る#110号車の異変に気付く。
「ホームストレートを駆け抜けるきたむーが明らかに低速に見えて、もしかしたら次の周回で辺りで戻って来るかもしれない」と監督のジーヤマに伝える。
ピット内のモニターでチェックしていると、最終コーナーでコースオフしているのが映し出されていた。
その後、自走出来ずパルクフェルメに運ばれる#110号車を手隙のメンバー達で救援に向かう。
ピットイン後、すぐさまジャッキアップし不具合箇所の特定に入る。
コースアウト時、砂利を拾ってタイベルカバーが破損。タイベルのコマ飛びを誘発したようだ。
原因特定してからのよしあきとモミの修理作業が恐ろしいほど早く、連携振り含め流れるような作業に皆が感嘆する。ドラシャも併せて交換し、1h掛からずにリカバリーしてみせた。
こうして次のドライバー、倉田のオッサンにタスキが無事に繋がった。
#110がピットインしている間、対照的に#101は飛雄が総合2位まで浮上し、大役を果たしぴたおに繋いでいた。そのぴたおも途中SCの間にピットインし連続走行。
そして、11時18分。開始から3’03.420。
#101号車が総合1位に躍り出る。
ピットでは、懸命に#110号車の復旧作業中ではあったが、これには一同歓喜した。
光と陰。
対照的な光景であったが、それぞれが持ち場で役割を直向きに全うしている。
今年もまた筋書きのないドラマを全員で戦っている。
#101 は第5スティントをグッチーが走る。
昨年の12耐、#110のベストタイムを叩き出し、その類稀なるドライビングセンスを買われ、今年は#101のBドラに昇格した。
1hの持ち時間をしっかり走り切り、総合1位をキープしたまま、12:41、4人目のDr.となるヒデヨシに替わる。
#110は、丸山-加瀬-瀧本とタスキを繋ぐ。
丸山の時は給油なし、加瀬の時には給油時、メカのよしあきが、屈んでフロントタイヤ、特にイン側の減り具合を落ち着いて見ている。
1hのピットイン作業の間に総合順位は92位まで落ちている。
14:11。瀧本をピットロードからホームコースに出て行くのを見送ると、よしあきが決断する。「次のスティントでピットインします!」
14:41、終始SCが入り気持ち良く走れる時間帯が少なかったが、それでも30分のスティントをこなした瀧本がピットに帰還する。その際、監督のジーヤマとメカのよしあきにブレーキングに不安が残ることを伝える。給油とDr.交替を規定の5分で終わらせると同時に、サポートメンバーで急いで手押しでピットにバックで押し込む。
そこから、メカのよしあきとモミが早業でフロントタイヤを外す。
タイヤの残り溝と減り方も均等で、まだ大丈夫。
更に勘を働かせ、ドラシャブーツそしてブレーキ残量とブレーキラインを増し締めする。
+2分で終わらせ、ピットロードまで#110を押し出す。
14:48、元気に斎藤がホームコースに飛び出して行った。
13:33。#101は5人目のDr.としてアゲマツが登場し第7スティントを務める。開始から5時間が過ぎ12時間の折り返しに入ろうとしている。
目下、総合4位。
この12耐では一介の外様であるアルファロメオがTOP争いを演じている。
給油を静かに待つその姿は自信と闘志に満ちている。
13:38。そのアゲマツもキッチリ5分でピットロードを飛び出して行った。
走り出して30分経過した頃からだろうか?
執拗に追うカメラワークで、黄色いMiToがピットモニターに大写しにされ続けている。
コーナーに入るブレーキング時に、マフラーから少し白煙が出ているようにも見える。
アゲマツが43分間のスティントを終えてピットに帰還する。
14:21。給油を終えDr.交替の飛雄が第8スティントに向かう行く手を阻むように、オフィシャルが駆け寄ってくる。
風雲急を告げるような嫌な汗が背中に流れる。
#101 黄色MiToに対して、オレンジボール(=オレンジディスク。車両の機械的な欠陥。今回の白煙走行がそれに該当したようだ。)とブラックフラッグ(危険運転行為)を出すか検討しているようだと告げられる。これは共にDr.をピットに召還する意味があるが、このスティント中に出てはいない。
ペナルティとして5分のピットストップを課すと宣告があったが、どうも情報が錯綜している。確固たる違反の事実があったのかも判然としない。
別のオフィシャルも現れ、オレンジボールに対する処置を修繕するよう指示が為される。
直前まで走っていたアゲマツがボンネットを開けエンジンを目視で点検し始めたが、オフィシャルからピットイン作業するよう指示が為される。
オフィシャルが修繕を監視する。
アゲマツは、作業をよしあきとモミに託し、詳細確認含めコントロールタワーに一人向かう。
その間、各所増し締めを実施し、修繕完了の判断を貰う。
コントロールタワーからアゲマツも戻り、危険運転行為については事実確認は認められず、間違いであることが判明した。やっとピットアウト。この間13分間が経過していた。
ピットアウトの間に、今は8位まで順位を落としている。
飛雄が遅れた時間を取り戻すようにコースへと戻っていった。
飛雄のスティントでも、執拗にカメラに追われ、ピットモニターに大写しにされている。
ここで初めてオレンジボールが掲示される。
15:00。
オレンジボールにより、ピット帰還命令。
ピットインすると、アゲマツもよしあきとモミがジャッキアップし不具合箇所の修理に入る。
オフィシャル立会いの元、修復作業に入る。
ターボのアルミ製オイルラインのパイピングに亀裂があり、そこから少量漏れがあることが分かった。
ジリジリと時間だけが過ぎていく。遠くリーダータワーを見上げると、駆け上がった#101がズルズルと落ちていく。
ドナー車両から部品取りして完全修復する判断が下される。
パドックまでドナー車両となるもう1台のMiToを持ってくる。
アゲマツとモミでドナー車両から、該当となるアルミパイプを外しに掛かる。
既に時計の針は16:00を指している。
1時間が経っていた。
モニターには#101は64位と表示されている。
何とか外し終え、ここからが早い。
#101で待ち構えていたよしあきも加わり、3人のペースがぐんぐん上がる。
既にマシンに乗り込み待機している飛雄。
16:36。ジャッキから下ろされ、手押しでピットロードへと送り出された#101。
引き続き飛雄が第8スティントのタスキを繋いでコースへと復帰していった。
その間、#110は第11スティントを務めるタモツが、#110のファステストラップとなる2’33.812を刻んでみせる。
前半のトラブルを誘引した責任を一日感じていただけに、昨年のベストタイム2’33.113には僅かに届かなかったが、役割を全うし安堵の表情を浮かべた。
光と陰。
明暗が反転する。
#101はスタートから7時間まで、全てが順調と言えるぐらい完璧に回っていたが、今年もまたモテギの魔物に苦渋を舐める。
対照的に#110は、前半のトラブルを全員で乗り切ると、9名のDr.全員でサポート係も分担し耐久を楽しんでいる。耐久本来の「皆んなで楽しむ!」を皆んなが率先して実践している。
前半のピットイントラブルから、スティント時間を再計算するジーヤマ。
「ドライビングを楽しみにしていた他のドライバーの持ち時間を減らす訳にはいかない」と自分とよしあきのスティントを削って帳尻を合わせる。
更にメカのモミに何やら相談している。
どうやら大胆な手を打つ気らしい。
16:53。開始から8時間30分が過ぎ、
#101はグッチーに代わり79位。
#110はきたむー88位。
どちらのマシンも淡々とLapを重ねていく。
17:46。9時間30分。
#101はグッチーに代わりヒデヨシ、75位。
#110は倉田-丸山と代わり83位までランクアップ。
18:19 全車ライトオン。モテギのコースにも夜の帳(とばり)が落ちてくる。
18:30。時計の針は10時間が過ぎ、ゴールまで残り2時間余り。
#101はアゲマツがナイトドライビングで意地の#101ファステストラップ2’23.612を叩き出し、74位。
#110は加瀬83位変わらず。
実はタモツのスティントの16:30から給油無しで周回を重ねている。
その企てを聞いた時に誰もが「ガソリン保つの?」と心配したが、机上の計算では何とかゴールまで保つ計算だった。
「足らずにガス欠で止まっても耐久らしいでしょう?アンカーのモミ自身に計算させたから、足らずなら自業自得でしょう(笑)」と屈託のない笑顔を見せる。
11時間経過(19:00)。いよいよラスト1時間。
#101はぴたおが巻き返しで66位まで浮上。
#110は斉藤82位。
ラストスティント。
この11時間メカとして懸命に2台のマシンを守り抜いたモミがレーシングスーツを身に纏い、#110はのDr.交代を待つ。
隣で監督のジーヤマが送り出す。
#101はアゲマツ。
サポート全員で2台のマシンを送り出す。
19:57 ラスト1周。#101は62位、#110は81位まで追い上げている。
チームの誰もがチェッカーを見届けようと、サインボードエリアのフェンスに集まる。
20:00 チェッカー。
#101 20:01’09.748.
#110 20:02’27.945.
ゴール。コントロールライン通過。
モミもアゲマツもマシンコンクリートウォールに寄せながら駆け抜けて、仲間たちに手を振りゴールの喜びを分かち合う。
ゆっくりと2台のマシンがピットに帰還してくる。
どちらも図ったかのように、ヘルメットを脱ぐとパンティ仮面で迎え討つ。こちらもそれを見越したように遠慮なく用意していた水をじゃぶじゃぶ掛ける。
耐久恒例とも言える、手荒い”祝福のシャワー”。
2018 idlers 12耐。
誰もが昨年の悔しさを胸に今年こそはと更なる結果を求め挑んだ今年の夏。
しかし今年もまたそう簡単には勝たせてくれなかった。前半までは最高のパフォーマンスだっただけに悔いだけが残る結果となった。
こうしてまた夏が終わった。
あの時見た、遥か先にある一筋の光が今もまだ見える。手を伸ばすと届きそうな、でも儚くも消えてしまいそうなその煌光は、いまでも残光となって心に消え残っている。
2018.07.29 idlers Games 夏の12時間耐久 in ツインリンクもてぎ 公式result
全出走台数 100台
Endurance-2クラス 64台
STiLENiA Works
最終結果 スティテニアMiTo #101
201周
総合62位 クラス47位
Best Lap 2’23.612 (177/201Lap)
最終結果 スティテニア156 TS #110
184周
総合81位 クラス57位
Best Lap 2’33.812 (110/184Lap)
「皆様のご声援ありがとうございました。全ての人に感謝します。」(スティーレ代表 上松淳一)